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あなたは私を、憶えていますか?
「………苗字サン、ってさ」
「ん…」
「馬鹿でしょ」
さっきまで泣いてて、今話してる間にも泣くのを堪えてた苗字サンは、そこでやっと涙が止まった。話の流れも全部無視した俺の言葉に、言ってる意味がわからないみたいな顔して。泣いたあとだったからそれが怯えてるようにも見えた。だけど俺は、泣くだとか泣いてないだとか――そんなもん、もうどうでも良かった。
「俺、初めて苗字サンに会った日にすんげえ予感してた。よくわかんない勘だけどさ。それが苗字サンに会った時、一気に弾けた感じしたよ。あぁ、俺のよくわかんねぇ心情はこの子から来てんだって」
苗字サンの目が揺らぐ。わかってないわかってない。何も知らないんだ。何も気付かずに終わったんだ。そりゃアイツだって――報われない。死んでも、死にきれない。そうだよ、苗字サンは勘違いしてる。全部話されて全部聞いて全部が繋がった俺からしてみれば、それはもう明白だった。ぐちゃぐちゃしてがんじがらめになった物は一つの線となって繋がってる。だからこそ俺は、今この状況に。今の、苗字サンに。ぐつぐつと腹から競り上がってくるような何かを感じていた。俺、怒ってんの。わかる?
――苗字サンは、何もわかってない。
「夢で見た事だってあった。苗字サンと俺が――赤也が。すげー幸せそうにしてんのを。赤也の目と心通して見てた」
「赤也、の……?」
「そう。アンタが、赤也と日曜に出掛ける約束をした時の風景」
苗字サンは目を見開いた。事故を引き起こした、約束をした日。さっきの話でも散々後悔してた、約束をした日。戻れるものなら戻りたいって思うよな。戻るならその時だもんな。多分忘れられないくらいに深く残った日だ。そりゃ驚くよな。当然だよ。でも俺がそれを見たのが嘘だなんて言わせない。だって俺の話が嘘だって言うんなら、アンタの異世界がどうのって話も十分嘘だって否定できる。
でもさ、違うんだよ。そんなもんで驚かないでよ。そんな事で納得しないでさ、もっと深いとこ見てよ。
何で、俺がそんな光景まで見てるのか。
「……さっき、目ぇ覚める前だって。あいつは俺の前に現れた」
「でも赤也は、」
「聞けよッ!あいつは、夢に出てきただけでなくそのまんま意識失った俺の前に現れた。記憶でも何でもない出来事でもないものを伝えるために。そりゃ思念とか未練とか言ったら簡単だぜ?だって赤也はもう居ねぇんだから。なのにあいつは、感情じゃなく俺に言葉を告げてきたんだ。だって苗字サンの話が本当なら、俺は違う世界のアイツ自身なんだから」
一方的で俺の疑問には全く答えてはくれなかった。何度もおかしな気持ちを抱いては振り回され、それがなんなのかすらわからずここまで来ちまった。
なぁ、赤也。それでも俺………アンタの気持ち、わかるぜ。
やっと、わかったんだ。
「アイツは…赤也は。幸せに、なって欲しがったんだよ。苗字サンに」
「しあわせ…」
「振り回されたのは運命になんかじゃない。仕組まれてたんだ。全部。赤也に」
違う世界の自分である、俺に。
違ってもいいから、自分自身に。
「俺に向けてきた赤也の気持ちは、全部苗字サンへの想いしかなかった」
「……ッ」
「苗字サンが―――どうしようもなく好きだったんだ」
顔真っ赤にして、どう冷やしたって腫れるだろうなってくらいまで涙を溜める苗字サンに、俺はやっと感情が収まってくる。伝わんなかった想いが交わって、死して尚想い続けたもんが、やっと、届いたのがわかったから。
―――敵わねぇよ。
ここまで想い合って、苗字サンに全部を投げ出して深い愛情持った赤也に。ほとんど同じはずなのに、全く違う赤也に。どこをどう割って入って代わりになれるって言うんだよ。
苗字サンだって、赤也が一番なのは変わりない。きっと、これからもずっと。この先何が起こって、苗字サンに好きな奴が出来て。例えそれが俺だったとしても。アンタはずっと苗字サンの中に根付いてく。最初で最後の、心から愛した相手。
もっともっとちゃんと、これからじっくりと。アイツが俺に伝えたもんを、苗字サンに届けていくから。
「だからさ、苗字サン」
ぼたぼたと、また溢れだした涙を拭って。
笑ってやってよ。俺の中にいる、赤也に。
――苗字名前が愛した、切原赤也に。
「忘れなくていい。ずっとずっと、憶えてていい。いや、憶えてなきゃ駄目だ。……でも、俺はアイツに、託されたから。アンタを、幸せにするって、任されたから」
無理に好きになんか、ならなくていい。
「苗字名前サン。改めて俺と―――友達になって下さい」
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「ん…」
「馬鹿でしょ」
さっきまで泣いてて、今話してる間にも泣くのを堪えてた苗字サンは、そこでやっと涙が止まった。話の流れも全部無視した俺の言葉に、言ってる意味がわからないみたいな顔して。泣いたあとだったからそれが怯えてるようにも見えた。だけど俺は、泣くだとか泣いてないだとか――そんなもん、もうどうでも良かった。
「俺、初めて苗字サンに会った日にすんげえ予感してた。よくわかんない勘だけどさ。それが苗字サンに会った時、一気に弾けた感じしたよ。あぁ、俺のよくわかんねぇ心情はこの子から来てんだって」
苗字サンの目が揺らぐ。わかってないわかってない。何も知らないんだ。何も気付かずに終わったんだ。そりゃアイツだって――報われない。死んでも、死にきれない。そうだよ、苗字サンは勘違いしてる。全部話されて全部聞いて全部が繋がった俺からしてみれば、それはもう明白だった。ぐちゃぐちゃしてがんじがらめになった物は一つの線となって繋がってる。だからこそ俺は、今この状況に。今の、苗字サンに。ぐつぐつと腹から競り上がってくるような何かを感じていた。俺、怒ってんの。わかる?
――苗字サンは、何もわかってない。
「夢で見た事だってあった。苗字サンと俺が――赤也が。すげー幸せそうにしてんのを。赤也の目と心通して見てた」
「赤也、の……?」
「そう。アンタが、赤也と日曜に出掛ける約束をした時の風景」
苗字サンは目を見開いた。事故を引き起こした、約束をした日。さっきの話でも散々後悔してた、約束をした日。戻れるものなら戻りたいって思うよな。戻るならその時だもんな。多分忘れられないくらいに深く残った日だ。そりゃ驚くよな。当然だよ。でも俺がそれを見たのが嘘だなんて言わせない。だって俺の話が嘘だって言うんなら、アンタの異世界がどうのって話も十分嘘だって否定できる。
でもさ、違うんだよ。そんなもんで驚かないでよ。そんな事で納得しないでさ、もっと深いとこ見てよ。
何で、俺がそんな光景まで見てるのか。
「……さっき、目ぇ覚める前だって。あいつは俺の前に現れた」
「でも赤也は、」
「聞けよッ!あいつは、夢に出てきただけでなくそのまんま意識失った俺の前に現れた。記憶でも何でもない出来事でもないものを伝えるために。そりゃ思念とか未練とか言ったら簡単だぜ?だって赤也はもう居ねぇんだから。なのにあいつは、感情じゃなく俺に言葉を告げてきたんだ。だって苗字サンの話が本当なら、俺は違う世界のアイツ自身なんだから」
一方的で俺の疑問には全く答えてはくれなかった。何度もおかしな気持ちを抱いては振り回され、それがなんなのかすらわからずここまで来ちまった。
なぁ、赤也。それでも俺………アンタの気持ち、わかるぜ。
やっと、わかったんだ。
「アイツは…赤也は。幸せに、なって欲しがったんだよ。苗字サンに」
「しあわせ…」
「振り回されたのは運命になんかじゃない。仕組まれてたんだ。全部。赤也に」
違う世界の自分である、俺に。
違ってもいいから、自分自身に。
「俺に向けてきた赤也の気持ちは、全部苗字サンへの想いしかなかった」
「……ッ」
「苗字サンが―――どうしようもなく好きだったんだ」
顔真っ赤にして、どう冷やしたって腫れるだろうなってくらいまで涙を溜める苗字サンに、俺はやっと感情が収まってくる。伝わんなかった想いが交わって、死して尚想い続けたもんが、やっと、届いたのがわかったから。
―――敵わねぇよ。
ここまで想い合って、苗字サンに全部を投げ出して深い愛情持った赤也に。ほとんど同じはずなのに、全く違う赤也に。どこをどう割って入って代わりになれるって言うんだよ。
苗字サンだって、赤也が一番なのは変わりない。きっと、これからもずっと。この先何が起こって、苗字サンに好きな奴が出来て。例えそれが俺だったとしても。アンタはずっと苗字サンの中に根付いてく。最初で最後の、心から愛した相手。
もっともっとちゃんと、これからじっくりと。アイツが俺に伝えたもんを、苗字サンに届けていくから。
「だからさ、苗字サン」
ぼたぼたと、また溢れだした涙を拭って。
笑ってやってよ。俺の中にいる、赤也に。
――苗字名前が愛した、切原赤也に。
「忘れなくていい。ずっとずっと、憶えてていい。いや、憶えてなきゃ駄目だ。……でも、俺はアイツに、託されたから。アンタを、幸せにするって、任されたから」
無理に好きになんか、ならなくていい。
「苗字名前サン。改めて俺と―――友達になって下さい」