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私は今でも


「―――……何でそうなるの」
「え?これは絶対こっちっしょ」
「私すっごい右側イメージで買った。だってそっちにしたら隠れちゃうじゃん!」
「ばっか!ひっそり見えるからいーんじゃん!!」


―――事故ったり苗字サンと色々あったりしてから、俺はやっぱり入院することが決まった。その間に先輩たちも同級生もチラホラ見舞いに来てくれて、苗字サンに至っては毎日来てた。んでもって、毎日安静にしてろと怒鳴ってた。俺的にはテニスしたかったし体力落ちんのも嫌だったからちょこまかでも動きたかったんだけどさ。でも少なくとも苗字サンがいる間は大人しくしてたし、話したかったから。………つっても、学校終ってから面会時間終了までずっといたんだけど。
終いにはまさかの丸井先輩と苗字サンが鉢合わせして、先輩は普通だったけど苗字サンは複雑そうだった。一応あとで一連の言動を問い詰めたら、「は?勘」とだけ返ってきた。それには俺も苗字サンと同じく複雑だった。

で、退院した頃には―――かなり、打ち解けた。

「………あのね。苗字さんも切原も仲良くなったのは良かったんだけど、そんな事で言い争わなくても…」
「そんな事ではありませんよ田原くん」
「そーそー!すんげぇ大事なことなんだって!」
「え。何その息の合い方……」

買ってきた飾りをどこにどう配置するか。クラスの実行委員と数名で話してたら、買い出し行った俺らにも火が回ってきた。事故の前のギクシャクだとか知ってる連中は驚いてるし、それが悪化したんじゃないかと思う奴もいた。けど、俺達は全然悪化なんかしてないし、田原が止めようとしても俺も苗字サンも遠慮なしで言い合って止まらない。そんなちっぽけなものに遠慮するような、関係でもないから。

だって、一生つるむ友達なんだから。




この世界で異質なのは俺も一緒。
苗字サンが自分を他とは違う異種だと言うなら、俺も交えることのない異種。

だけどそれでも苗字サンは俺の世界にきて、俺は苗字サンの世界の俺を知って、世界を知った。

両方の世界が混合した。違うはずなのに、俺達は交えてる。



―――なぁ、赤也。

この間退院してすぐ、体慣らしっつってテニスしたんだ。苗字サンと。
すんげぇ下手だったけど、楽しそうだったぜ。

俺は……苗字サンのことが好きなのは、お前が仕組んだ感情なんだと思ったけど。
それ、違うみたいだ。




墓参りすら出来ないけど。

俺はアンタにも、届け続けるよ。







異種混合


死んだって、消えたって、忘れられたって。

世界が違えど。


今でも君を、愛してる。
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