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天使は笑う(1/2)
私はとんでもない選択をしたんじゃないだろうか。
とりあえず俺達が話しても意味ねェからよい、と言われてこの船の船長さんに会うことになった。どうやら言ってる事はわからないが害はない人間だと判断されたらしく、比較的対処はいいと思う。というかそもそも、害がどうのなんて私は論外だと思うんだ。だってこのバカデカイ船は見る限り男の人ばっかでしかもみんな屈強な海の男です、みたいな感じだし、そんな中力も何もないただの女である私が単身一人で何かが出来るわけがない。まぁとにかく警戒というか悪い扱いをされないのは嬉しい事で、根っからの日本人である私としては是非とも会話での平和的解決を望みたい。
前を歩くリーゼントさんとよいよいさんをちらりと見る。船長さんの所へ案内すると言った以降はあんまり口を開いていないけど別に居心地の悪い空気ではない。これはただの勘だけど………良い人達なんじゃないかと、勝手に思ってる。
ぴたりといつの間にやらついたらしく、二人が一つの部屋の前で立ち止まった。他の部屋より幾分も大きい扉を見上げて唖然。確かに船長さんの部屋には相応しいかも……。
ノックを二回叩いて、親父、入るよいなんて言って二人は部屋に入ってく。…親父?って疑問を持ったけどリーゼントさんにちょっと待っててと言われたので慌てて返事をする。先に事情を話してからの登場らしい。気分はまるで転入生だ。
―――船長って言うからには、怖いのかな。
勢いでここまで来たはいいけど、はっきり言ってノープラン。お互い何かがおかしいとかいうアバウトな感覚でここまで来ちゃったし、よくよく考えればそれって向こうからしたらどうでもいい事なんじゃないだろうか。だって自分の船なんだもん。いくら船員の一人を助けた人間だからって不審者だと思ったら捨ててもいいじゃないか。
そう考えたらここまでしてくれてる彼等に若干感謝しなければいけないかも。私としては突然投げ出された海。今の所は追い出されずに済んでいる船。
これは、ひょっとして運が良い―――のかな?
「ひゃくめんそー」
「!?」
いつの間にか扉は開いていて、リーゼントさんがよっかかって見ていた。そんな事にはまるで気付かなかった私はびくりと飛び跳ねて驚いてしまった。ああびっくりした……!
リーゼントさんは私の反応が面白かったのか口に手を当てて笑ってる。そして全く抑えられてない。いやいや私だって好きでそんな反応したんじゃないんです条件反射です!
頭ん中じゃ色々と言い訳が浮かぶけど流石に言える勇気はない。リーゼントさんはくつくつと笑いながらも入っていいよと中へ促してきたから、私はちょっと複雑な気持ちで扉をくぐった。
くぐった、ら。
「………………え?人!?」
入ってすぐに居るんじゃないかなとは想像してた。けどいやまさか………あの見間違いじゃなければサイズが尋常じゃないんですがギネス並じゃないか!!
ええええ、見上げなきゃ目が合わないとかどういう事……暫くぽかんとして見てたけど、突然頭上からグラララララとかいう独特な笑い、声…?だよね…?が聞こえてきて、はっとする。
―――やっちまった……!!
「安心しろ。サイズはちィとばかしでけェが、人だ」
「す、すみません…!!」
「グララララ」
あぁ馬鹿!1分前の自分を殴りたい……っ!よいよいさんとか超目が怖い事になってるよさっきまで良い人かななんて思ってたんだけどあれおかしいな!
ちらりとリーゼントさんも見てみれば、こっちは苦笑してた。やっぱりまずかったらしい。
「まァ、そんな気ィ張んなくてもいい」
「はぁ……」
他二人と違って船長さんは寛容らしい。もしくは言われ慣れてるのかなぁとも思ったけど、やめた。これ以上考えることこそが余計に失礼だ。
ふぅ、と一息吐いて脳みそをリセットさせる。私が招いた事で、私が壊した空気だ。今度はちゃんと………話さなきゃ。
「船長さん」
ハッキリ言うつもりで出した声だけど、思ったより響いて内心ちょっと揺らぐ。けど、それをまた一気に引寄せて保った。
―――部屋に入って初めて目が会った時、言い知れない安心感が広がったから。
「私の話を、聞いて下さい」
名も知らない人なのに、話を聞いてもらいたいと思った。