クーフーリン・オルタの恐怖

 急に後ろが騒がしくなって、クーフーリン・オルタは煩わしそうに振り返った。

 見るとマスターがいたところにサーヴァントが集まっていて、何やら必死な形相で叫んでいる。聞き取ろうにも皆大声で、言葉を被せるように話すものだから、誰が何を言っているのか聞き取ることができない。それが余計に煩わしくて、オルタは話題の中心に近づいた。

 そこには何かを抱きかかえる清姫がいた。
 だらりと垂れる腕に意思はなく、薄く開かれた眼は無機質なガラスのように虚空を見つめている。口の端から流れる血は赤く鮮明で、見慣れたはずの色に目が眩む。青々と茂る草葉の隙間は赤く湿っていて、人間が流していい量ではないと悟るには十分だった。

「だめ……だめよ、ますたぁ、おいてかないで……っ」

 清姫が亡骸に声をかけている。両目からぼろぼろと涙をこぼしながら、必死に話しかけている。

 オルタは無言で立ち尽くした。

 死んだ。死んだのだ。見るに値しない死体の一つ。積み上げた瓦礫の仲間入り。それだけのことなのに、手が震え、首を絞められたように呼吸が乱れる。
 この震えは何だ。喉を圧迫する息苦しさは何だ。この手で殺したわけじゃない。想像で痛みを感じるようなタマでもない。なら、この痛みは何だ。元よりこの体は、棘の痛みでおかしくなっている。今更傷一つ増えたところで揺るぎはしない。だというのに──

 目の前に横たわる死体を、どうして信じられない。




「オルタ、今日元気ない?」
「うるせー」