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《 それでは 先ほど行われた雄英高校謝罪会見の一部をご覧ください 》
《 この度、我々の不備からヒーロー科1年生28名に被害が及んでしまったこと、ヒーロー教育の場でありながら敵意の防御を怠り、社会に不安を与えたこと、謹んでお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした 》

無数のカメラのフラッシュオン、ライト、その先で相澤先生が深々と頭を下げて謝罪をしていた。謝罪会見、なんて大層な名前だ。彼らは 何も悪くないのに、

《 読売テレビです。雄英高校は今年に入って4回、生徒が敵に接触していますが 今回生徒に被害が出るまで、各御家庭にはどのように説明をされていたのか、具体的にどのような対策を行ってきたのかお聞かせください 》
《 周辺地域の警備強化、構内の防犯システム再検討、強い姿勢で生徒の安全を保障すると説明しておりました 》

校長先生がいつもと変わらずにそう答えると 死柄木は飽きたのか否か、ブチリとテレビの画面を切った。真っ黒くなった画面に、わたしたちが反射して映り込む

「 不思議なもんだよなあ。何故 ヒーローが責められている? 奴らはすこおし対応がズレていただけだ。守るのが仕事だから? 誰にだってミスの一つや二つはある。お前らは完璧でいろって? 現代ヒーローってのはかたっ苦しいなあ 爆豪くんよお? 」
「 守るという行為に対価が発生した時点でヒーローはヒーローでなくなった、… これがステインの御教示 」
「 人の命を金や自己顕示に変換する言いよう、それをルールでギチギチと守る社会。敗北者を励ますどころか責め立てる国民。俺たちの戦いは問い。ヒーローとは 正義とは何か、この社会が本当に正しいのか 一人一人に考えてもらう。俺たちは勝つつもりだ。君も、勝つのは好きだろ? 」

嗚呼、悪い人。

ヒーローとは、正義とはなにか だなんて。感性なんか人それぞれでいるのに。この世の人類、みんなの考え方が一致したのなら そりゃあもう 平穏でいて幸せな世界が形成されるだろうね

ヒーロー側の考える ヒーローの理想像と、
敵側が考える ヒーローの理想像。

この世の全人類の考え方が一致していたのならばこの世にヒーローなんていらないのに

「 荼毘、拘束外せ 」
「 は? 暴れるぞコイツ 」
「 いいんだよ、対等に扱わなきゃな。スカウトだもの。それに、この状況で暴れて勝てるかどうかわからないような男じゃないだろ 」
「 … トゥワイス、外せ 」
「 はあ俺? やだし 」
「 外せ 」
「 も、やだあ〜 」

渋々、そういった表情で爆豪くんの近くまで行き カチャカチャと拘束具を外し始める

「 強引な手段だったのは謝るよ。けどな、我々は悪事と呼ばれる行為に勤しむただの暴徒じゃねえってのをわかってくれ。君をさらったのはたまたまじゃねえ 」
「 ここにいるもの、事情は違えど 人に、ルールに、ヒーローに縛られ苦しんだ。もちろん、名前だってそうだ。… 君ならそれを 」

BOOOM!!

「 死柄木!! 」
「 ッ黙って聞いてりゃダラダラとよお、… バカは要約できねえから話がなげえ 」

バチバチ、
掌から小さな火花が飛び散る。

この状況で暴れ出す爆豪くんに 呆気にとられてしまって 思わず開いた口が塞がらない。

「 要は、嫌がらせしてえから仲間になってください、だろお? 無駄だよ、俺は オールマイトが勝つ姿に憧れた、…ッ 誰が何言ってこようが、そこはもう曲がらねえ! 」

『 俺はヒーローも辞めねえしその大切な人も殺させねえ。どっちも自分の力で守りきる 』

嗚呼、そうだ、… 彼は、……

「 おとう、さん… 」

彼は、いずれか オールマイトをも越すほどの ヒーローになる男だ、

《 生徒の安全、とおっしゃいましたが イレイザーヘッドさん 》

先ほどの爆発の勢いで床に落ちたリモコンの電源ボタンが押され、先ほど切ったはずのテレビ画面にまた謝罪会見の映像が映し出される

緊迫されたこの密室の中で、均衡状態を保ちながらも 自然と意識はテレビ画面に注がれる

《 事件の最中、生徒に戦うよう促したそうですね? 意図をお聞かせください 》
《 私共は状況を把握できなかったため、最悪の状態を避けるべくそう判断しました 》
《 最悪の事態とは? 26名もの被害者と、2名の拉致は最悪とは言えませんか? 》
《 わたしがあの場で想定した最悪とは 生徒が為すすべなく殺害されることでした 》
《 被害の大半を占めたガス攻撃、敵の個性から催眠ガスの類だと判明しております。拳藤さん、鉄哲くんの迅速な対応のお陰で全員命に別状はなく、また 生徒らのメンタルケアも行なっておりますが、深刻な心的外傷などは今のところ見受けられません。》
《 不幸中の幸いだとでも? 》
《 未来を侵されることが最悪だと考えております 》

プロヒーロー育成の雄英。

ヒーローになりたいと願い、熾烈な倍率の中を潜り抜けてきたヒーローの卵。未来ある卵の未来を奪われないことが、最優先

《 攫われた2人についても同じことを言えますか? まず爆豪くんですが、雄英校に優秀な成績で入学、体育祭優勝。また、中学時代、ヘドロ事件で凶悪な敵に単身抵抗を続け、経歴こそタフなヒーロー性を感じさせますが、反面、決勝で見せた粗暴さや表彰式に至るまでの態度、精神面の不安定さも散見されています。もしそこに目をつけた上での拉致だとしたら、言葉巧みに彼を拐かし 悪の道に染まってしまったら? 未来があると言い切れる根拠をお聞かせください 》

ヘドロ事件といい、体育祭といい、有名な彼だから故、刺々しいマスコミの質問が問う。

マスコミは常に、人の嫌がることを質問する。その質問に対する答えに、マスコミはまた嫌なところを突く。

嗚呼、嫌いだ、… 思い出してしまうから

《 …… 爆豪勝己の殺ごうな態度については教育者であるわたしの不徳の致すところです。ただ、体育祭での一部の行動は彼の理想の高さに起因しています。誰よりもトップヒーローを追い求め、藻掻いている。アレを見て隙と捉えたのなら 敵は浅はかであると考えています 》
《 ッ根拠になっておりませんが…? 》

「 ッは! 言ってくれるなあ雄英も先生もッ! そういうこったクソカス連合! 言っとくけど俺はまだ 戦闘許可解けてねえぞッ! 」
「 自分の立場、よくわかっているわね 小賢しい子ッ! 」
「 いや、馬鹿だろ 」
「 刺しましょう 」
「 その気がねえなら懐柔されたふりでもしとけばいいものを。やっちまったなあ 」
「 したくねえもんは嘘でもしねえんだよ俺はァ! こんな辛気臭ェとこ長いする気もねェ! 」

《 … では 質問を変えましょう。攫われたもう1人の蝕喰さんについてはどう説明するおつもりですか? 》

人並みの人生という名のレールからはみ出してしまうことが怖かった。人並みの人生を送ることができないのが怖くて、悔しくて、悲しくて、恐ろしかった

《 彼女は自らの個性で父親を殺害したという拭えない殺人の過去があることを知っていて、雄英の特待生として入学させましたよね? 》

なんとか他の子たちと同じように、周りに合わせて必死に化けの皮が剥がれないように生きてきた、

《 監視下の元、特待生として雄英に入学させたようですね? そんな彼女が、誰かを救うヒーローになれるとでも? 世間が、それを許すとでもお思いで? 》

過去のことは拭えない、わたしが犯した罪は消えずに残り続ける。

憧れてしまったヒーローになることを、決して許してはくれない、

《 …… 確かに、雄英に特待生として入学させたのは彼女の個性が十分に危険であり 前科もある以上取り返しのつかないことになる前に更生させないといけないという名目でした 》

普通でいることが一番難しかった。普通という言葉が何よりもわたしを締め付けた。不思議なことにこの世界は、普通でいることが難しかった、

普通でいられないわたしが こんな世界で誰かの命を救うヒーローになるなんて、なんて烏滸がましいことなんだろう

《 が、入学した時にはもうすでに蝕喰名前は 自分の個性と向き合い、苦しんでいました。それでも立派に他のヒーロー科の生徒となにも変わらず、ヒーローになるためにこの3ヶ月間、必死に頑張ってきました。わたしはそんな蝕喰の頑張りを担任として誰よりも見てきたつもりでいます。もし仮に、彼女が敵に屈して我々の前に敵として現れるとしたならば、蝕喰の悩みに気がつくことのできなかったわたしの責任でもある故、処分を受けるつもりでいます 》

「 せんせい… 」

《 蝕喰名前は ヒーローになれる 》

「 ッ 」

ひゅ、と喉が渇いた。

ヒーローになれる、相澤先生のその言葉が嬉しかった、ずっと欲しかった言葉だった。

相澤先生の嘘偽りがないその言葉が、どうしようもなく嬉しくて、罪悪感で押し潰されてしまいそうで、たまらない

嗚呼、どうしよう わたし

相澤先生の気持ちを裏切ってしまっている、
ヒーローなんかになれない。

わたしなんかが誰かを護るヒーローなんかに、みんなから好かれるヒーローなんかになれない

「 あいざわ、せんせい…ッ 」

だけど どうしようもなく、わたし、また あの場所に戻りたいと思ってしまったの。

クラスメイトの、… みんなの、あの暖かい元に帰りたいと、思ってしまったの。