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「 発信機の示した座標は 神奈川県横浜市神野区。長野からの出発ですので、約2時間… 10時頃の到着です 」
爆豪と蝕喰救出のため 5人で急いで新幹線に乗り込み、俺と轟、向かい側には八百万と緑谷、そして 飯田だけが通路を挟んで座る形となった
「 あの、今夜出発とか、そういうの、みんなに伝えてるの? 」
「 ああ、言ったら余計止められたけどな 」
「 あんの後、麗日がだめ押しできついこと言ってくれたぜ… " 爆豪くん、きっとみんなに助けられるの屈辱なんと違うかな " ってよ 」
『 名前ちゃんのことだって、もちろん心配しとるよ、… でも やっぱりプロに任せた方がいいんとちゃうかなあ 』
クラスのみんなが 2人のことを心配してる。心配してねえ奴なんか誰1人いねえ。でも 手の届く距離にいたんだ、あの時 あの2人のことを、助けられたかもしれねえんだ…ッ
なら俺は 2人を助けたい
「 …… 一応聞いとく、… 俺たちがやろうとしていることは 誰からも認められねえ エゴってやつだ。引き返すならまだ間に合うぞ 」
「 迷うくらいならそもそも言わねえ! アイツは、… 爆豪も、蝕喰も 敵の良いようにされていいたまじゃないんだッ 」
「 緑谷はどうだ? 」
「 僕は…… 」
緑谷たちが目の前で爆豪と蝕喰を失ったことも聞いた、ほんとうに、あと少しで取り戻せる距離にいたことだって聞いた。多分、俺なんかより悔しい思いをしているんだと思う
だから ボロボロの緑谷を誘った、
「 後戻りなんて できない 」
「 そうか、わかった 」
この話は一回終わりな、俺がそう言うと駅で買った弁当を再び食べ始める。
神奈川まで2時間、か。長えなあ。その間にあいつらの身になにも起こってねえといいな、
真っ暗な闇の中ひたすら走り続ける新幹線。窓から見える街の光だけがこの世界を照らす。
「 …… お前らに、伝えたいことがある 」
トンネルに入った新幹線。
光が遮断された。
「 ?なあに轟くん 」
「 名前のことなんだが 」
ぼうっとして窓を眺めてっと、轟にしては歯切れが悪い。言うべきか言わねえべきか悩んでるっつうか、
" どうしたんですの、轟さん " と 再度、八百万から問われると ゆっくりと口を開けた
「 襲撃された日、切島は一瞬で名前が消えたっつってたな。その一瞬で、敵に攫われた、と 」
「 ああ、俺らが相澤先生の話に気を取られて蝕喰から目を離した隙にな…! USJん時のワープ野郎の仕業かなんかだろ 」
「 ……… いや、違え。」
「 え? 」
「 …… 恐らく名前は、あいつ自身の個性でその場から一瞬で消えた 」
ひゅ、と八百万の声が漏れた。
「 は、… どういう、こと? ……ッ轟くん、何か知ってたりするの!? 」
「 敵連合開闢行動隊って名乗った奴らのこはなんも知らねえ、…… ただ俺はお前らより、A組の誰よりも名前を知っているつもりだ。あいつの性格のことも、… 個性の事も、昔、何があったのかも 」
待て待て待て、
蝕喰自身の個性で消えた……?
「 蝕喰の個性は腐蝕だろ!? それでどうやって一瞬で消えることできんだ? 」
「 " あいつの個性は腐蝕だけじゃねえ " 」
「 …… 遅かれ早かれ、きっとみんなも知る事実だとは思うが… 今まで頑なに、その個性の存在を隠してきた名前が今回、躊躇いもなく使ったっつうのが気になった 」
「 ?じゃあ あの場から蝕喰が消えたのは蝕喰自身の判断…? 」
" ああ、恐らくな " すっぱりとそう言い切る轟。俺も緑谷も、八百万も飯田も、この場にいる轟以外の4人が轟の話についていけずに ただただ言葉の意味だけを機械的に理解する、
「 八百万、… 緑谷、切島、飯田。」
「 頼む、あいつのことを嫌わないでくれ 」
◇
『 どうしよう、… お願い、助けて先生ッ 』
今思えば 職場体験の後から少し様子が可笑しかったかもしれん。
いつも通りに振舞っているつもりで、どこか なにかに怯えているように見えた
どこかクラスメイトから一歩引くようになっていた。成績不振なわけではなかった。はたから見れば別にどこも調子は悪そうじゃなかった。だから俺も深く考えないでいた、
結果、気づけなかった俺のせいでもあるか…
『 確かな名前はないけど、わたしは勝手に略奪って呼んでます。この手に触れた人の個性を奪い取って、自分のものにできる個性です 』
期末試験の後、蝕喰の口から直接聞いたその事実はまだ記憶に新しい。略奪、全くもって厄介この上ない個性、
幸か不幸か、授かったのが蝕喰で良かったと言うかなんと言うべきか。悪の権化のようなやつに授かっていたらたまったもんじゃないだろう
「 爆豪、蝕喰、…… 俺はお前らが目指すヒーローになってほしいと 思ってる 」
爆豪も蝕喰も、腐るなよ…
まあ、大丈夫だとは思うがな
「 おいイレイザー、会見が始まるぞ 」
「 ブラド、… 今行く 」
用意されていた部屋から出る前にもう一度、鏡を見てネクタイの位置を確認する。マスコミは好きじゃねえんだ…
「 蝕喰のことを聞かれたらお前、なんて話すつもりだ。馬鹿正直に話すのか 」
「 なんのことだ 」
「 とぼけるな。蝕喰の過去話掘り下げられたらどうすんだと聞いている 」
「 今の蝕喰とは関係ない。それに、正当防衛だろうあれは。… まあ 聞かれた時は上手くやる 」
「 そうか…… 蝕喰のことはお前に任せた 」
「 ったく、教師も楽じゃねえな 」
≪ ◇ ≫