闘神太子
(2/5)
──それはそれは悍ましい日々。
あの部屋での一件は、私が"李塔天様は人では無い"と思うに容易い出来事でした。
沢山の造り出された者達の前。そこに茫然と立ちつくす私に、李塔天様は告げたのです。
「直に闘神太子となる息子だ。お前に、この偉大なる我が息子を預けようぞ」
「なっ……、その様な事は」
「なんだ?出来ないとでも申すか?」
恐々たる眼差しで私の言葉を遮り、今まで知る優しさの破片さえ見つからない表情で私を睨み、それから私達を囲んでいる者達を仰ぎ見た。
「一度不浄なる者と捺された烙印はなかなか消えまい。そんなお前にここで何が出来ると言うのだ?」
李塔天様の蔑む目に息苦しさを覚え、浅い呼吸を繰り返しては我を保とうと必死で拳を固く握る。
「我が息子の付き医者になれ。ゆくゆくはお前も一目置かれるやもしれぬぞ?」
今し方拘束を解かれたばかりだった私はただでさえ覚束ない足取りであったが、李塔天様の口から零れる言の葉に手の震えは止まらず、とうとう私は床に座り込んでしまった。
「元を辿れば全て私の冒した大罪にございます。……直ちに観世音菩薩に事の次第をお話しして参ります」
最後の力と言うよりも、絶大なる罪悪感に押された気力だけで立ち上がった私は、よろよろと李塔天様の横を通り抜けるが、それを愚行だと言わんばかりに竦み上がる視線が私の背中を貫いた。
「ほう。この者達を見捨てる……。今の言葉はそう解釈してよいのだな?」
まことしやかに恐ろしいお方。
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