焦る先の闇

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胸を打ち付けるような音が私の中にこだまする。それは、あのお方が帰られてからも尚続いていた。


急いで湯呑みを片付け、自室でいつもとは違う画面に向かって頭を振った。どんな裁きも受け入れる思いは十二分にある。しかし、それは『今』であってはならない。


「もう少し……もう少しで……」


唇を噛み締めてキーを叩く。私は、強制的に生み出された者達を守らなくてはいけない。ナタク様をお守りしなければならない。それは私の義務であり、償いであり、ここに在る理由なのだから。


金蝉様にお渡しする報告書を仕上げながら、一人孤独に押し潰されそうになるも、ふと見やった窓の外には風に揺れる美しい桜の木が在った。

その風に靡く様が私に向かって頷いているようで、胸に巻かれた鎖が幾分弛んだ気がしたが、無限の時の中では何をするのにも果てしなく、喜怒哀楽、その全てが悠久なのだと、痛感させられてもいるようだった。


さあ、早くこの報告書を金蝉様にお届けしなくては。大きく息を吐き、今やるべき事を済ませてしまわなくては。


手元の報告書を手に取り、私は早速金蝉様の元へと向かった。

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