残るは虚無

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鎮静剤により訪れる束の間の安息と心地良い眠りへの誘いに委ねようとした時。



「おっ、こんな所に美味そうな血の匂いの女発見!」

「……カス野郎」


わたしの目の前に迫る妖怪を、木に凭れたまま見上げながらに見下した。


するとその妖怪はわたしの顎を掴み、首筋から滴る血液を舐めとり笑う。


「じっくり食べてから喰ってやるよ」

「どうせなら蟲ごと喰ってくれる?」



蔑んだ目が気に入らないのか妖怪は一気に服を切り裂くが、そんなのどうって事無いんだよ。

お前に何処触られ様が感じない。


「その程度?」


幾ら言葉で煽っても何も感じない。抵抗する気も起きないよ。お前なんかじゃ……。




――ガウンっ!



銃声が掠めた瞬間目の前で妖怪が崩れ落ち、入れ替わる様に三蔵が前を立ち塞いだ。



「何してんだバカ女」



その時三蔵に差し伸べられた手が温かそうで、一瞬胸がチクリとした。そしてその手を掴んだら、さっき三蔵と触れた唇が熱を持った。



「……こっちが聞きたいよ」



気を許すんじゃなくほんの少しだけ受け入れてみたら、わたしの中の蟲は静かになって……。



そう思ったら、そう思ったら……。

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