流されてみるのもいい
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雲間からの月明かりに照らされて、三蔵と手を繋いだまま宿へ歩を進める。
黙ったままの三蔵の金糸が月光を反射して、何だかその髪に無性に触れてみたくなった。
ほんの数時間前は、自分で『触るな』と拒絶したのに、今は繋がった三蔵の手を振り解きたくないのは何でだろう。
宿に着き、部屋に入っても手は離される事は無く、二人でドアに凭れたまま。
そしてわたしは不意に自分の唇に触れた。
「初めて……かもしれない」
「何がだ?」
口にしたつもりはなかったのに、自然と零れた言葉に三蔵はわたしを見たまま呟いた。
一方的なのに優しい……。あんなキス……わたしは知らない。
「別に……何でもない」
三蔵はフンと鼻で笑うが、それでもわたしの利き腕は三蔵に握られたままで、紫色の瞳で見据える三蔵の空いてる方の手がわたしの頬に添えられた。
力強く、だけど優しく引き寄せられ、ゆっくりと近付く唇がもどかしくも切なくて、何だか胸の辺りが騒がしい。
三蔵……。
そう呼ぶ前に唇は重なり、三蔵の舌が深く絡み付く。
何度も何度も交わる様に何処までも何処までも絡み合い、初めてキスの甘さを知った。
呼吸のための僅かな距離すら鬱陶しく思うほど、軽く啄む唇さえももっと深くと手繰り寄せる様に、甘く甘い……多分、これがキスなんだろうな……。
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