キスでもしてやろうか

(2/6)
静かになった部屋で、わたしはまた三蔵と二人っきりになった。三蔵は何も言わずタバコの煙を巻き上げてわたしを見つめる。


散歩に行ってくる。


喉元まで出かかった言葉を飲み込んで、わたしはシャワーを浴びることにした。


勢いよく蛇口を捻り、熱いシャワーが首筋の傷に少し沁みる。

全部綺麗に洗い流そう。身体だけじゃなく後ろ向きな心を洗い流そう。



バスルームを出て入れ替わる様に三蔵がバスルームに向かったのを確認後、テーブルに突っ伏して煙草を銜えると何処からかゆるりと風が舞い込んできた。



「よう。調子はどうだ?」



卑猥に満ちた姿を惜しげもなく見せつける様にわたしを見下ろす神、観世音菩薩だ。


「……とりあえずノックを覚えようか」


いつもながらの神出鬼没っぷりに呆れつつも、構わず菩薩は意地悪そうに口角を上げ、わたしの耳元で囁いた。



「三蔵とのキスはどうだった?」



――ガタンッ!


余りの驚きに思わず椅子から飛び上がり菩薩を睨み付けるが、当の菩薩はどこ吹く風でいつの間にか窓辺に移動している。


「怒るなよ。でも、よかったじゃねぇか」



窓に映った菩薩は目を細めていた。

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