キスでもしてやろうか
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長い間、あの小さな窓から桜の木を眺めるだけだったよな。
暗い無機質な部屋で無機質に列ぶ画面に向かい、それでも必要とされているのだと疑いもしねぇで。
言われるままに造らされ、用が済んだらお払い箱。
……その後の事は、五百年経った今でも思い出したくねぇよ。
願わくば今度こそ。
一時だけ見せたあの笑顔が、陰る事の無い様に……。
菩薩はなまえに近付き静かに抱き締めた。
「……菩薩?」
「何でもねぇよ」
悔やまれて仕方がねぇ。お前はこんなにも温かいってのに……。
五百年前の俺は冷たいお前しか抱き締めてやれなかったよ。
その時バスルームのドアが開き、銃を構えた三蔵が立っていた。
「何してやがる?」
いや、俺だけじゃねぇ。
こいつだってそうだ。
なまえから離れた菩薩は三蔵に向き直り、真っ直ぐ見据えて言った。
「モタモタしてんなよ」
求めるのは必然なんだからよ。
そう残して菩薩は風も巻き上げずに消えて行った。
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