little by little

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「いい加減に世の中を習え。夜に一人で彷徨かれて死なれては迷惑だ」



木に凭れて暗い空を仰ぎながらそう言った三蔵。言い方はきつくても、三蔵がわたしを心配してくれている事が十分解って嬉しかった。



「じゃ努力してみるから、眠るまで子守歌でも歌ってくれる?」

「死んだら存分に唱えてやるぞ」



想像通りの三蔵の返しにわたしが声を上げて笑うと、三蔵は片方の口角だけを釣り上げて妖しく笑った。



「お前がどうしてもってんなら一緒に寝てやってもいいんだぞ?」



そう言いながら風さえも遮る程に近付く三蔵の顔。そして触れ合う唇と唇。





好きだの嫌いだのの話は置いといて。恋だの愛だのも置いといて。


もう、これからどうなるかなんて野暮な事を考えるのは止めてしまおうか。



ただ、今、わたしは三蔵とキスがしたい。




離れても尚、直ぐに触れられる距離にある三蔵の唇。こんな事、思った今しか出来ない。

だから……、少しだけ自分で踏み込んでみた。




「三蔵、おやすみ……」




唇から唇へ。



わたしは三蔵に直接言葉を送り込んだ。

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