後悔と憧れ
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旬麗さんがそう叫んだ瞬間、わたしは二人の妖怪に茂みの奥に投げ込まれ、銀髪の妖怪は旬麗さんを連れていった。
旬麗さんが危ないと思っても、こちらも二人相手では分が悪い。
先程茂みにぶち込まれた時に銃も手放してしまった。
どうしよう。どうしよう。
お願い……、助けて……。
情けなくもわたしは願うことしかできなかった。過信した訳でもなく、こういう状況を予測出来なかった訳でも無い。あんなに必死な旬麗さんを助けたいのに、その力が無いと痛感したわたしができる事が、それしか無かったからだ。
「三蔵……!悟空……!悟浄!八戒……っ!」
結局わたしは足手まといでしかなく、自分の落とし前もつけられない大馬鹿者だ。自分の事だけならいい。でも、ここには旬麗さんが居る。
「……お願い、助けて」
そう溢した時だった。旬麗さんの叫び声の方から悟空達の声も聞こえ、わたしは心底安堵した。
首筋に吸い付かれるというより噛み付かれ、生温かいものが滴り落ちているこの状況よりも、彼らが来てくれた事に安堵し、わたしは目の前の妖怪に意識を向ける。
「……痛いのは趣味じゃ無いんだけどっ!」
渾身の力を込めて蹴り飛ばし落とした銃を拾いに走れば、銃より早く三蔵達を見つけてしまった。
「なまえっ!探しましたよ!」
駆け寄ってくる八戒の背後に迫る妖怪を見つけ、何を言う前にそれを指差す。
「八戒うしろ!この妖怪もあいつの仲間っ!」
わたしがそう言うと八戒は眉を顰め、いつも肩にかけている布をわたしに巻き付けて三蔵に向き直る。
「ここに居るのはあんたの恋人じゃないんだな?」
「ええ……、背格好は似ているけど違います。……慈燕を……慈燕を知らないっ?その人と同じ銀髪の……っ!」
「知らねぇな。この辺で銀髪妖怪は俺くらいだぜ」
旬麗さんはそれを聞いて気がゆるんだのか、気を失ってしまった様で、それを見たわたしも安堵と多量の出血の為かその場に身を投げてしまった。
妖怪が悟浄に吐き捨てた暴言に切れたのは悟浄じゃなかったり、笑って生きてる四人とか……。
すっごく羨ましくて目を閉じたんだ。
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