無一物

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走ってるはずのわたしに走れと叫ぶ悟空は、いつの間にかわたしの真後ろに回り込んでいたカミサマ目掛けて殴りかかる。


悟空の拳はドカッと壁に叩き付けられたがカミサマを捕らえられず、崩れ落ちた外壁はわたしの足元を掬った。


カミサマはそれを見逃さない。そしてそんなカミサマを三蔵達も見逃さない。一斉にカミサマに飛びかかり攻撃を仕掛ける。


「はぁ、はぁ、この……!何度やったって同じだよ!どうせ指一本も触れられないクセに!」


攻撃は当たらなくても追い詰められてるのはあいつの方だった。


何度も立ち上がる三蔵達に、カミサマが取り乱す。


「いい加減にしなよもー!しつこいと女の子に嫌われるって、先生が言ってたぞ!」









その時──こいつが"先生"と呼んだ"おじさん"を、三蔵は"うこく"と呼んだ……。


おじさんを、"烏哭三蔵法師"だと───。



不思議な事に、目の前は恐ろしく静かで小間切れで、三蔵の声もカミサマの声も聞こえなかった。


おじさんは誰なの?



ふと足元を見たら、沢山の縫いぐるみがわたしを見上げ、わたしの足を引っ張っていた。



オモチャなのに……、オモチャだから……、オモチャだって……。

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