無一物

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三蔵の声に合わせて巻き上がる経文は、オモチャをオモチャに変えて三蔵の手に戻り、いきり立ったカミサマを悟浄が掴み上げ拳を振り落とす。



そして悟空も如意棒を打ち付け、そのまま外壁まで吹き飛んだカミサマは咳き込みながら声を張り上げた。



「殺してやる!殺してやるから!」


「どうぞご自由に?」


そう言った八戒が手に気功を集める。だけどこれはフェイクで、八戒は両腕を広げてカミサマの前に立ちはだかり、まるで八戒を盾にするかの様に、その後ろから三蔵が銃を放った。



「あ……う……あぁぁぁっ!」


大きな悲鳴を上げ倒れ込むカミサマの真上から三蔵が鋭く見下ろす。



「"無一物"という言葉がある。師が俺に残した言葉だ。俺は俺なりの解釈でここまできたつもりだったが、むしろ俺が何よりも捕らわれていたのは"無一物"という言葉そのものだったんだ」




なまえは未だオモチャに埋もれたまま、泣きそうな顔で三蔵を見つめていた。



「迷いはない。俺には俺の生き方が、玄奘三蔵の称える"無一物"がある」


「……わかんないよそんなの。俺には何にも無いのに……君は色んな物持ってるじゃんか。……ズルイよそんなの。……ねぇ、俺に頂戴?」






──やらねぇよ。



──……ケチ。








そして時を見計らったかのように揺れ出した部屋。亀裂が入り、少しずつ崩れていく。



「……ああそっか。ゲームはもうおしまいなんだね……先生」

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