無一物
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何にも考えず、流れる雲をただ仰いだ。
免許を持たない三蔵の荒い運転に騒ぐ面々にも動じず、なまえはぼーっと空を見ていた。
「おいちょっと見ろよ!なまえ、すっげーアホ面!」
「げっ!何?廃人?なまえちゃーん、大丈夫ー?」
二人がなまえを覗き込むと、なまえも二人に視線と笑みをひとつ向け、二人の首にガシッと腕を回した。
「ぐぉっ!」
「し、死ぬっ!」
「ははっ。ざまーみろっ!」
なまえはそう言いながら二人を解放すると、カラッとした笑顔を見せて悟浄を見上げる。
「ここ、わたしの指定席。だから何しててもいーでしょ」
「ははっ、違いねーや」
「何か悟浄となまえが怪しいぞっ!」
悟空が身を乗り出し三蔵に向かって叫んだが、当の三蔵の視線はルームミラーに注がれている。勿論、なまえの視線の先もルームミラーに向けられている。
「……八戒、三蔵となまえも怪しい……」
「それは平和でいいじゃないですか」
流れる雲は風任せ。
それは果たして偶然か、それを疑問に思うことは必然か。
何もない。だけど無意味じゃないなら、あんな最後なんて真っ平だ。
何かに捕らわれて探し求めるよりも、自分が望むものを探せばいい。
無理に繋がりを求めなくても、自分の居場所はここなんだと、最後まで言い張ってやる。
利己主義で超都合のいいわたしの"無一物"。
今度三蔵に聞かせてあげようと思う。
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