Encounter01

「何をご覧になっているのですか?」

赤茶色の髪を掻き上げ、至極柔和な顔で長い黒髪の男とも女とも言える高貴な人物へ問い掛ける男。
そこへは視線こそ返ってこないものの、悪戯っ子の様な声が届いた。


「クソ不味い茶しか出せなかった奴がどうにも面白くてな。気になるならお前も誰か看てみるか?」

「よろしいのですか?」

「特別にな」


ふっと笑みを零し、少し伏せていた顔を上げて遠くを見つめる。心の準備とまではいかないが、ゆっくりと深呼吸をしてから一歩踏み出す男。


「お前は何を看たい?」

「……そうですねぇ。願わくば花のような妹と……例えようのない最愛の人を……今一度」


男がそう呟くと、その男の見えない所で口角を上げるは、慈愛の象徴とも呼ばれる観世音菩薩。

その傍らで柔和な顔を崩すことなく遠くを見つめている人物は、最近この天界に来た者だと言う。


「まったく白々しい新人が来たもんだ」

「これはこれは酷い言われようですね」

「はっ、時空間ゲートを弄れる奴がシラを切っても無駄なんだよ」


大雑把に髪を掻き上げてはにやりと笑う観世音菩薩を前にしても、表情を少しも崩さずに佇む男は、新入りにもかかわらず時空間ゲートの修復、改善を任されていた。


「僕を呼び寄せたのは他でもない観世音菩薩、あなたですよ」

「だからと言って好き勝手していいとは言ってないぜ?」

「ですから、僕がこうするとお解りで呼んだのでしょう?」


なんの因果が結び付けたのか、決して交わらない世界を繋ぐもの。


「ははっ、違いねぇ」



Encounter.
そこには危険や困難も存在する。だからこそそれは、紛れも無く確かな邂逅なのだ。

だからこそ、その偶然も必然なのだ。



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