事の次第が全て記載されているという資料を手渡されたが、それを見た観世音菩薩と男は溜め息を漏らした。
「なんだよ、結局詳細は不明って事かよ、面倒臭ぇな」
「も、申し訳ありません。ですから、あの……」
口ごもりながら二郎神が視線を向けた先。そこへ居るのはあの柔和な顔の男だった。
「……えっ、僕……ですか?」
「ありがとうございます!お頼み致しましたぞ!」
「え、……あの、二郎……」
二郎神は男の手を大袈裟なほど力を込めて握り締めると、観世音菩薩の方を一切見ずに部屋を後にした。
目を丸くして足早に去って行った二郎神の残像を見続けている男と、そんな男を愉快そうに見ている観世音菩薩。クツクツという笑い声と溜め息が交差すると、男はスッと立ち上がった。
「仕方ないですね。少し調べて来ます」
そう言って席を立った男に、観世音菩薩は今までとは違った視線を向ける。それは普段はあまり見る事の無い、この天界の一責任者としての顔をして男を見やった。
「調査が終わり次第、細大漏らさず報告しろよ」
「承知致しました」
男は一礼してドアから出ていくと、すぐさま時空間ゲートのメインシステムルームに向かい、調査を開始する。該当日近辺の時空間データを取り出し、ゲートが開かれた場所の特定を急いだ。
……と、そこまでは順調に進んだが、この時空間ゲートがこじ開けられた時に転送されたとみられる人物が確認されると、流石に柔和な男も眉間に皺を寄せずにはいられなかったのだ。
資料をまとめ、観世音菩薩の元へ急ぐ男は、事態の収拾をどうつけようものかと、再び観世音菩薩の元へ舞い戻ったのだった。
Encounter.
許される者と許されざる者の境界線。曖昧な一線の上でも決して赦されない。
知った上で繋ぐ者と、知らずに繋いでしまう者。存在する世界と、存在していた世界。
選択の連続。どれを選んでも必然ならば、二つの道を用意するだけ。
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