時に、先入観というものは自衛の為の大役を果たしてくれるが、その先入観が追い付かない、あるいはその先入観と真逆な事が起こると自滅しかねない。
件のお茶を一口飲んだ男はそう改めて実感した。
「殺人的な甘さ、ですね」
「だろ?何でも、頭を使うには糖分が必要だとか言って、あいつは大量の砂糖を塗した茶葉でいれてたんだよ。で、極めつけにお茶請けは砂糖漬けのブルーベリーだ。笑えねぇだろ?」
観世音菩薩はテーブルの真ん中に置いたブルーベリーをひとつ摘み、それを静かに眺めている。
「ククッ、二度目に会った時は違う意味てクソ不味かったな」
懐かしむと言うより、どこか悔やむような顔の観世音菩薩に男は尋ねる。
「二度目……ですか?」
「一度目はこの天界で。二度目は下、だ」
摘んだブルーベリーを頬張り、蓮池の方に視線を向ける観世音菩薩は、ずっとずっと遠くを見つめているのか、男はその視線の先を辿る事が出来なかった。
そんなもどかしさから男が手前のお茶に再度手を伸ばした時。突如として声を荒げた二郎神が割って入ってきたのだった。
「お二人共、探しましたぞ!」
「……そんなに慌ててどうしたんだよ」
ぜぇぜぇと喉を鳴らしている二郎神を嗜めつつ、観世音菩薩は先を促す。
「た、たった今、何者かがゲートを無理矢理こじ開けた模様です!」
観世音菩薩と男が顔を見合わせる。
──ゲートを操作するとなれば多岐に渡る膨大な知識と正当な理由は言わずもがな必要不可欠。
それでいて、いざ操作するとなるとこの天界からでも至極難解な作業なのである。
にもかかわらず、一人間がそれを無理矢理にでもやって退けるとは何者なのか。
そう逡巡した観世音菩薩と男は、二郎神から手渡された資料に視線を落としたのだった。
Encounter.
自ら造り出した歪みに求めるのは己の私欲より他ならない。
引き寄せ、引き寄せられた先が例え塵界だったとすれど、それも確かな邂逅なのだ。
前者も後者も、偶然にして必然の邂逅なのだ。