身の程を知れ

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とある街にある高級クラブ。そこへ最近入り浸っている三蔵法師がいるという噂を聞き付け、三蔵一行は調査の為にそこを訪れていた。


豪華な建物は上品な造りで、いかにも会員制の一見さんお断りなクラブを前に、本当に三蔵法師がこんな所に?と疑わしく思うものの、その噂は街中に広まっていた為、三蔵一行はとりあえずと調査に乗り出したのだ。


しかし、やはりそこは一見さんお断り。門前払いをくらった一行は、宿に戻って作戦会議を始める。


「客としても入れないんじゃ難しいな」

「そうですねぇ。何とか中に入れる方法があるといいんですが……」


それぞれが別々の方向にため息をつき思案していると、名案を思いついたとばかりになまえが声を弾ませた。


「はい、はい、はーい!」

「……何だよ」


四人の視線を一手に受けるも、なまえは臆すこと無くこう言った。


「私、あのクラブで働いてくる!」


右手を高らかに掲げるなまえには一同絶句。しかし、眉間に相当数の皺を寄せた三蔵は直ぐに立ち上がった。


──スパーン!


「……え?……ダメなの?」

「ダメに決まってんだろうがっ!」


勢いよくかまされたハリセンに頭を擦りつつ、なまえは三蔵をキッと睨んだ。煮詰まっているところに出した自信満々の名案だと思ったのに、それが三蔵の一声で拒否されてしまい、さすがのなまえもご立腹のようだ。


「なんで?だって、他に方法がないならいいじゃん!」

「ククッ、お前、その顔」


頬を膨らませながら抗議するなまえは至って真面目に怒っているのであろうが、三蔵はその姿が小動物のように見えて堪らず笑いを漏らしてしまった。しかしそれは紛れもなく悪手と言えよう。三蔵の馬鹿にした態度は常々だが、今回はタイミングが大変よろしくない。二人を取り囲む三人は、口に出さずとも"やっちゃったなー"と、三蔵に哀れんだ視線を送った。


「三蔵のその態度、人としてどうかと思うよ!」

「仕方ねぇだろ。お前がチビ猿に見えちまったんだからよ」

「ねぇ、それ、二度と言わないで」

「チッ、……煩ぇチビ猿だな」

「……かっちーん。それアウトだから!」


テーブルを力一杯叩き付けて立ち上がったなまえに、一同は戦々恐々とした。未だ嘗てなまえのこんな顔を見たことがあっただろうか。普段なら頃合いを見て八戒が待ったをかけるのだが、この日は八戒も件の"ニセ三蔵法師"に頭を悩ませていたため、一歩出遅れてしまったのだ。

しかしそこで八戒を責めるのは何とも筋違いな話で、元はと言えば三蔵の口の悪さが原因なのだ。なまえにも元々無鉄砲なところはあるが、どちらかと言えば話は通じる方だ。話せばちゃんと理解し、それを汲み取り受け入れてくれるのだが、三蔵の質の悪い冗談も素直に受け止めてしまう嫌いがある。


「あのさ!あのクラブに誰か潜入しなきゃいけないんでしょ?でもお客としては無理なんだから、中で働くしかないじゃん!」

「てめぇはそのくだらねぇ事しか言わねぇ口を閉じろ。だいたい、お前みたいなチビ猿があの高級クラブで働ける訳無ぇだろうが!」

「はぁぁぁぁ?私のことナメないで!って言うか、他に方法が無いならダメ元でもやってみるべきじゃない!?いつまでもグダグダ話し合ってても埒があかないじゃん!」

「だから口を閉じろって言ってんだろうがっ!ダメ元だろうがなんだろうがお前には無理だって言ってんだよ!いいかげん身の程を知りやがれ!チビ猿がっ!」


売り言葉に買い言葉とはこのことである。なまえは自分も役に立ちたいと必死で、三蔵はそんななまえを心配している。付き合いの長いメンバーから見ればそれが明らかであると判るのに、ヒートアップしている二人には届かないのである。


「……三蔵、その言葉、絶対忘れないでよ?」

「……は?」


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