身の程を知れ

(2/4)
「悟浄、付き合って」

「……え?オレ?」






賑わう街へ、なまえは悟浄を連れて歩く。その目には、三蔵への怒りがしっかりと込められていた。そんななまえに付き合うこととなった悟浄は、どうしたものかと悩むものの、結局どちらの味方も出来ないとの結論に至る。いつも中立の立場を貫いている八戒は、普段からよほど苦労しているんだろうと、悟浄もこの時ばかりは八戒を崇めた。


「悟浄、どんな服が流行ってるか教えて」

「……ホントにやんの?」

「もちろんだよ」


悟浄の心配をよそに大きく頷くなまえは、もう止められそうもなかった。溜め息を溢しつつ、悟浄はこの際とことん付き合ってやるかと、なまえの手を取り店の方へ歩き出した。

二人がその店内に足を踏み入れると、きらびやかなドレスやシックなワンピースなど、おおよそ流行中と思われる服が並んでいた。悟浄はその中から深紅のロングドレスを手にとる。ほどよい光沢感のあるそのシルクのドレスは、胸元が大胆にカットされているが、それを補うように縫い付けられているレースが上品さを演出している、なんとも素晴らしいドレスで、なまえは悟浄が手にするそのドレスを一目見てピンときたらしい。


「うん、これにする」


控え目にアクセサリーをレンタルし、最低限のメイク用品を購入した後、なまえは宿の一室でそれらを纏った。この世界に来てからは着飾ることなんて無かったからか、なまえは久しぶりのお洒落に余念がない。自分を一番良く見せるメイク、それとドレスに合わせたヘアスタイル。なまえはそれを全て自分で仕上げていく。


「……よし、出来た。悟浄、もう入ってきても大丈夫だよ!」


鏡を覗きながらそう言うと、なまえは部屋の外で待機している悟浄を呼ぶ。なまえは背筋を伸ばしてすっと立ち、優雅に手を組んで悟浄を迎え入れたのだ。


「お待たせいたしました。いかがですか?」


悟浄はドアを開けるや否や、なまえの姿に瞠目した。何もしていない普段のなまえも可愛らしいのだが、これには流石の悟浄も閉口して瞠目するしか無かったのだ。そんな悟浄になまえがすっと手を差し出す。細くしなやかな指先からも確かな気品が感じられる。


「悟浄、エスコート、お願いね」

「……よろこんで」


悟浄に手を引かれて三蔵達が居る部屋をノックする。ドアが開き、悟浄の後ろからなまえが姿を見せると、その場が一気に静まり返った。悟空は大きく口を開け、八戒はコーヒーカップを持ったまま固まり、三蔵は咥えていた煙草をポトリと落とした。


「みなさん、お待たせしました」


淑やかに礼をしたなまえは、勝ち誇ったように三蔵を見る。色付いた唇に笑みを乗せ、ゆっくりと三蔵に近付いた。そして三蔵の耳元へ唇を近付け、静かな怒りを込めた声で囁いた。


「私、チビ猿ですか?」


三蔵の顔はみるみる歪み、眉間の皺が一際深く刻まれる。予想以上に変身を遂げたなまえを前にし、三蔵は咄嗟に対処出来なかったのだ。それをなまえは見逃さず、口元の笑みを深くするが、三蔵はそれでも足掻いた。


「どんなに見てくれを変えてもチビ猿はチビ猿だろうが!」

「……ふーん。そう。じゃ、三蔵サマはそこで大人しく待ってて」


そう残したなまえは、悟浄と共に再び部屋から出ていった。呆気に取られた一同は、暫くドアを見つめていたが、漸く八戒が口を開いた。

「三蔵、いいんですか?」

「……チッ」

.
- 2 -

ListTopMain
>>Index