覚悟はできてんだろうな

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今日も今日とて西への旅は続く。近頃はなまえが十分に睡眠をとっているおかげか、ジープの後方は賑やか、を通り越して酷く騒がしい。今日もなんやかんや三人で喋り通しだ。


「うわっ、いってー!悟空、そんなに髪の毛引っ張るなよ!」

「えーだってなまえがもっときつくって言うんだもん!」

「悟浄、動かないで!」


いつの間にか悟浄が真ん中に座り、両サイドでは悟空となまえが悟浄の髪を編んでいる。どうやら昨日のババ抜きの罰ゲームのようだが、そんな元気な面々と違い、睡眠不足に苛まれている三蔵にとっては頭痛が増すばかりの光景だった。


───ガウン!


「銃口を喰わせてやるから死にたいヤツだけ口を開け」

「……ごめんなさい」

「今日も平和ですねぇ」




いつものおきまりのパターンに飽きることもなく、しゅんと肩を落とした後部座席の三人を微笑ましく見守る八戒に、三蔵は何度繰り返すんだと眉間の皺を深くする。口で言って判るようなヤツ等なら、これがおきまりのパターン化するはずがないのだ。そして、その後に妖怪の襲撃に遭うこともこれまたお決まりとなっているのだから、三蔵の機嫌はいつだって最悪なのだ。もちろん、本日も例に漏れず。


「三蔵一行ぉぉーー!今日こそ経文はいただいていくぜぇぇぇぇぇ!」

「……チッ、面倒臭ぇ」


銃声や金属音を響かせながら、辺りには倒れた妖怪が次々と重なっていく。蜘蛛の子を散らすように、あっという間に妖怪が散っていくのだ。これを面倒と言わずしてなんと言えよう。三蔵は法衣の裾を払いながら、さっさと助手席に乗り込んだ。


再びジープは走り出す。しかし、ここでもあのお決まりのパターンが発動するのだ。日々の睡眠不足を補うことも出来ず、後部座席の騒がしい声を浴び続けるとあっては、三蔵のイライラが限界を超えるのは時間の問題だ。


「マジで覚えてろよ」


運転席の八戒にしか聞こえなかったであろうその言葉は、今夜のなまえの安眠を著しく阻害するものだということは、この時は誰も気付いていなかった。







砂埃を巻き上げてひたすら西を目指す三蔵一行。各々は夕暮れ時になってからようやく街へ辿り着き、騒がしい夕食を早々に終え、八戒により割り当てられた部屋へ移動する。もちろん、超が付くほど不機嫌な三蔵は、今では当たり前のようになまえと同室だった。

部屋に入るなりシャワーを浴び、さてどうしてくれようかと煙草に火をつける。深く吸い込み、それを何度か繰り返した後、なまえがシャワー室から出てきた所で煙草の火を揉み消した。


「なまえ、覚悟はできてんだろうな?」

「え、な、なんの……?」


三蔵の鋭い視線に目を丸くしたなまえに、三蔵は口元だけ笑って見せた。そしてたっぷりと時間をかけて立ち上がりなまえの前を立ち塞ぎ、なまえの顎を指で持ち上げた。


「人の気も知らねぇでアホ面で寝てるなんて、いい度胸してんじゃねぇか」


言い終わるや否や、なまえの唇は三蔵に塞がれ、突然のことに理解が追い付かないなまえは、固まったまま三蔵の唇を受け止めたのだ。しかし、三蔵はそれをいいことに、自らの舌をなまえの唇に割り入れ、息をつく暇もないほどに咥内を舌で乱した。


「……んっ……さん……ぞ」


頬を紅潮させて見上げるなまえに、三蔵は妖しく笑う。すっとなまえを抱き上げ、なまえの耳を一舐めしてから囁いた。


「散々我慢してやったんだ、今日こそ覚悟しておけよ」


そう耳元で囁いて、なまえをベッドへと連れていったのだ。


END
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