Disappear
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シャワーの音も聞こえない程広い部屋。一人で食べるご飯は美味しいの?
どんなに持て囃されても見えない囲いが聳え立ち越えられない。
何か、寂しいね。
バスルームから出てきたセフィロスを見てそんな事を考えていた。
「……何だ?」
「英雄も考えもんだね」
期待、羨望、賞賛。そんなものが幾らあっても分かち合えないモノがあるんだよね。
「考えた所でお前は英雄とは無縁だろう」
長い髪を掻き上げたセフィロスは真顔で言う。どうやら英雄はボキャブラリーに乏しいようだ。
「もっと会話を楽しもうよ……」
呆れ顔でセフィロスに背を向け窓辺に移動した。すると窓硝子に映ったセフィロスの顔が徐々に大きくなってくる。
「楽しみは他にもあるだろう?」
片方の口角だけを上げたセフィロスは、そう言ってわたしを後ろから抱き締めた。
「ちょ、何してんのっ!」
余りの俊敏さに驚いたわたしはとっさに体を捩る。しかし相手はセフィロス。捩った体を上手く流され、わたしはセフィロスと向かい合う。この時わたしは直感した。
絶対キスされるっ!
セフィロスとぴったり密着した体。わたしの頬に添えられるセフィロスの手。
「ちょ、セフィロスさんっ!」
……解っているのに逃げられない。セフィロスに適う奴なんてこの世界に居ませんっ!
不適な笑みが近付き、鼻先同士が触れるとセフィロスは呟いた。
「大人はキス位でいちいち騒がないのだろう?」
「なっ、……ザックスとの会話、聞いてたのっ?」
セフィロスの端正な唇からフッと笑みが零れた瞬間、それはわたしの唇と重なった。
正確には重なっただけじゃない。唇の隙間からセフィロスの舌が絡みつき這い回り、大きな手で頭を固定されたわたしに逃げ場は無い。
「んっ……!」
胸を押し退けようとも無理な話で、わたしはされるがままにセフィロスの深い口付けに目眩を覚えた。
しかしそれも束の間。セフィロスは軽々とわたしを抱き上げベッドに下ろし、妖艶な笑みを浮かべ長く綺麗な髪を垂らしながらわたしを見下ろす。
「セ、セフィロス……?ま、ま、まさか……ねぇ?」
「まさかとは何だ?」
誰でもいいから助けて下さいっ!
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