モテる男はお辛いですか?D

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涙を拭いて、新しいクラッカーを鳴らして

『おめでとう』



そう言ったら、ゲンマは苦笑しながら千本を揺らした。



「今、すっげぇ腹減ってんだ。お前の料理、期待してるからな」



ポケットに手を突っ込んだまま上がり込み、椅子に腰掛けテーブルに並んだ料理に目を細めている。


バレバレの作り笑いに気付かない振りをしてくれてるの?



何だかそんなゲンマの心遣いで気持ちが楽になったから、向かい合わせに座ってロウソクに火を点けてから思いっきり大きな声でバースデーソングを熱唱した。



「オヤジおめでとー!」

「お前、これ嫌味だろ?」



ロウソクで見えなくなったケーキの灯りを吹き消せば、うっすらと昇っていく煙。


真っ白なテーブルクロスに、グラスに注がれた赤いワインが映えて、それを私の部屋から持ってきた間接照明が静かに照らす。



いつもより大袈裟に笑って不安を拭い去ろうとしてたけど、ゲンマにはお見通しだったのか、プレゼントを差し出したのにゲンマが掴んだのは私の腕だった。



ゲンマと繋がれた手がテーブルに架かり、少しの沈黙の後にゲンマが口を開いた。



「似合わねぇ顔してんじゃねぇよ。今日は俺が主賓だよな?そんな顔じゃ最高のもてなしは期待出来ねぇよ」




ゲンマは私の腕を掴んだままそう言って立ち上がり玄関に引っ張って行く。


「ちょ、ゲンマ!?」

「煩ぇ。主賓は俺だ。黙ってついて来い」

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