Last Chance
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「カカシは何考えてっか解んねぇし、いっつも本心は見せねぇ奴だ。けどよ、あんなカカシは初めて見た」
ゲンマは私を責めるでも無く至極穏やかに話していたが、急に私の腕を掴みクローゼットの前に引っ張り出した。
「ゲンマ、急に何っ!?」
私の問いには答えず、ゲンマはクローゼットを潜り抜け、クローゼットを挟んで向かい合った。
「ゲンマ……?」
「クローゼットなんてぶち壊してやるよ。そしたら悩まなくて済むじゃねぇか」
目が合った瞬間、ゲンマが何かを唱えた。するとクローゼットの中が炎に包まれ、ゲンマの影すら見えなくなった。
……もっと早くこうすれば良かった。もう嫌だよ……。夢見てた将来が突然消えてしまうのは……。どうせ消えてしまうのなら早い方がいい……。
炎は燃え移る事も無く、クローゼットの中だけが煤けていた。
お互い元の世界に戻っただけだよ。カカシと出会う前に戻っただけだよ。
それだけの事だよ……。
夢から醒めただけ……。
「……夢」
カカシと居た時間も、私のこの気持ちも、夢だったと諦めればいいんだ。最初にそう思ったじゃない。泡沫の夢なんだと。
なのに、この腕に残る温もりや、耳に残るこの声は消えない。見えない左目に焼き付いたこの影も消えそうにない。
実体を持った夢なんてよく言ったものだ。
自分からカカシと離れ、カカシとの繋がりを断ったのに……。
膝をつき、前のめりに倒れ込み、嗚咽混じりに叫ぶはカカシの名前。
「カカシっ……嫌だよ……っ」
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