あの日の事

(7/7)
そんな事を思い出していると、俺の背中から小さな声が聞こえてきた。


「前にもあったよね」


肩に乗ったなまえの顔が僅かに動くと、なまえも同じ日を思い出していたんだと嬉しくなった。


耳元で聴こえたなまえの声は、静かに撫でていく風にすらさらわれそうで擽ったい。


「あの時の事、カカシも覚えてる?」


「よーく覚えてるよ。アカデミーに入りたくて隠れて修業してた時の事でしよ?」


後ろから俺の首に回されたなまえの細い腕は、しっかりと俺を掴み、時折俺の耳元になまえの吐息がかかる。


「そうそう!カカシがアカデミーに行っちゃって寂しくて、私も早くアカデミーに行くんだーって修業してたの。懐かしいなぁ」


「本当、その後親父さんに怒られて半ベソかいてたお前が懐かしいよ」


「それは言わない約束でしょ!」


いい大人が昔話しながら声を上げて笑っている姿は、端から見れば恋人同士に見えるかもしれない。


しかし、確かにそこにある愛情は俺が望むものとは程遠く、それを痛感しつつも未だにこの場所に甘んじているのは、どんな形であろうとなまえを手放したく無いからなんだ。



なまえの温もりを乗せた俺の足は、一歩一歩力強く地面を蹴りながら家路を辿っていく。



あの日と同じように、ゆっくりと。

.
- 22 -

ListTopMain

>>Index