隙間から覗く君

(7/7)
「私、解ってたの。あの人が最初からそういう目的で近付いて来た事……」


ぼんやりと前を見つめ、まるで他人事のように話しはじめるなまえの横顔は、闇夜に寂しそうに映る。

「でも勘違いしないでね。あの人の頼み事は、忍としても人としても言語道断。……それも最初から解ってたから」


時折揺れるなまえの髪の隙間からは、俺の知らない女性としてのなまえが見え隠れし、今にも抱き留めてしまいそうになる衝動が刺激を受ける。


「じゃお互いに好きじゃなかったって事?」

「……そう、だね。でも私はそれで良かったの」


そう行き着いた過程を知らない俺は、辺りを取り巻く空気が急に薄くなったみたいに息苦しくなり、急な坂道を全力で駆け上がっている気分だった。

諦めや悲壮感を漂よわせる彼女に、良かったなどと言う台詞は到底相応しく無い。


「俺だったらそんな付き合いはさせないよ」


無意識に、それは幼なじみの兄として、一人の男として、俺の口から出た言葉。

そこへ暫しの静寂が訪れた後になまえから返って来た言葉は、更に俺を息苦しくさせ、とうとう堪らなくなった俺は力一杯なまえの手を引き寄せた。


「私、カカシとはそんな付き合い出来ないよ」


どうとでも取りようのあるそんな台詞。しかしその言葉には期待よりも恐ろしさが多く孕んでいるようで、自分の耳を塞ぐように彼女を抱き締めた。


「それ、どういう意味?」


聞かなければ始まらない。苦しさのせいで胸の鼓動に鼓膜を突き破られそうだけど、彼女の答えによっては急速に衰えてしまうであろうこの心音が、今はすごく耳障りだ。


男として抱き締めている今が少しでも長く。できればこの先何度もこうしていたいのだと願ながら、抱き締めた腕に力を込めて、隙間から覗くなまえからの言葉を待っていた。

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