隙間から覗く君
(6/7)
クナイを持った手を緩めると、男は何も言わずよろよろとした足どりで座敷を離れた。そしてそれと入れ代わるようにアスマと紅が顔を出す。
「……終わったのか?」
重苦しい雰囲気に気を遣いながらアスマが言葉を発するも、俺の心中は穏やかとは程遠い。
「アスマ、紅、悪いけどなまえに話があるから連れて帰るよ」
詳しい話はまた明日、と付け足した後、二人が頷いたのを確認した俺は、なまえの手を掴み足早に店から連れ出した。
外は厚い雲がかかっているのか酷く暗く、月も星も見えない夜道を街灯が頼りなく照らしている。
夜風が静かに抜けていく中、黙ったままのなまえに視線を落とした。
「あんな奴が好みだったの?」
我ながら嫌味な質問をしているという自覚はある。しかし、俺の中の男としての部分でどうしても納得がいかない。
「……ごめん」
「ごめん、ってそれだけ?」
抑えられない苛立ちは、一体何にぶつけるべきだろう。あんな頼み事をしてきたあの男には勿論だが、あんな男だったと見抜けなかったなまえにもぶちまけてしまいたくなる。
「……ごめん」
その謝罪の意もどこか遠く思え、いまだなまえを掴んだままの手に力が入る。感情が心の中から飛び出してくるのを押さえ込むように、俺は掴んだ手に力を込めた。
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