彼女が望む明後日
(2/6)
「そのままの意味だよ」
なまえは俺を抱き締め返す事なくそう言って顔を上げた。その目には、この状況にあっても戸惑いすら映さずに俺だけが映っている。
「それは、俺とは付き合えないって事で合ってる?」
「うん。合ってる……」
全身から力が抜けていくのが解り、夜の闇に溶け込んでしまいたいとまで思ったが、そう言ったなまえが静かに笑っているのが不思議だった。
そこにはまるで負の感情というものが感じられなかったから。
また夜風が吹き抜けていった暗い夜。すっかり力が抜けて、辛うじて回しているだけになってしまった俺の腕の中には、そんななまえがまだ収まっていた。
「どちらかの気持ちが無くなってしまったら終わり、なんて……そんな関係は嫌……」
それは小さな声だったけれど、俺の耳にしっかりと届いたと同時に、深読みしてしまっている自分が居る。
「カカシとそんな終わり方は絶対に嫌……」
喜ぶべきか迷ったが、俺からしてみれば明らかな失恋だ。彼女は、恋人同士ではなく、今のままを望んでいるのだから。
「俺、なまえの事好きだよ」
「うん。私もカカシの事が好きだよ」
それでも、俺はこれ以上触れる事は許されてはいない。
いまだ抱き締め返してくれないなまえに、無言でそう言われているようだった。
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