知らない昨日

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アスマとそんな話をしていた時だった。勢いよく店のドアが開き、数十分前になまえと出て行った紅が険しい顔をして飛び込んできた。


「ちょっと大変!なまえがどこかに行っちゃったわ!」


息を切らした紅はただならぬ表情で俺達を見つめ、乱れた呼吸を整える事も忘れて話し続ける。


「なまえの家に行ったら鍵が壊されていて、部屋も荒らされていて、それを見た途端、なまえが飛び出して行っちゃった……」


それを聞いた俺は素早く頭を回転させる。

経験上、空き巣なら部屋を荒らして出て行くケースは稀だ。それに下調べの段階で忍の家だと解れば避けるのが懸命な判断だと言える。
行きずりの物取りならわざわざ鍵を壊してまで侵入するとは考え難い。


……つまり、なまえ個人が狙われた可能性が高い。


「とにかくなまえの家に行ってみよう」



俺の中ではおおよその見当がついていたが、それはなまえの家に着いた頃には確信に変わっていた。


「どう見ても忍の仕業じゃないね」


辺り一面に残った人の匂い。これはつい先日嗅いだ事があった。


「ご丁寧に足跡まで残しておいてくれたみたいだな」

「それを見る限り、犯人は男で確定ね」

「あぁ。あの男、でね」



三人でそう頷き合ってから部屋を出た。もうすぐ日付が変わろうとしている辺りを見渡し、月夜に揺らめく気配を探した。

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