知らない昨日

(6/6)
──なまえはずっと監視されているんだね?

──いいえ。それは彼女ではありません。



深い暗闇に覆われた一角。そこに残された俺達にむかって、なまえは『ごめん、任務だから』とだけ告げてこの場を後にした。


釈然としないまま帰路につく事しか出来なくなってしまった俺達は、それから無言で各々の家へと向かった。


玄関を開ける時、ふとなまえの部屋を見たが、まだ明かりはついていない。

なんだろう。この無性に込み上げてくる恋しさは。昔は知らない事なんて無かったのに、今は知らない事ばかりだ。


会いたい。会って、なまえは今でも自分の知っているなまえだと確かめたい。


そんな思いに支配され、中々玄関を開けれずにいると、俺の願いが届いたのか、遠くからなまえの足音が聞こえた。


「……あ、カカシ」

「や、なまえ。……お疲れさま」


重い空気が漂う中、なまえは俺の方へ歩み寄る。その足取りは重いが、それは先程の任務で所々に怪我を負ったからでは無いだろう。今日の事をどう話そうか逡巡しながら、一歩一歩近付いて来ているのだろう。


「カカシ、あのね……」

「うん。なーに?」



顔を上げたなまえはなぜか泣きそうで、その理由が解らない俺は言葉に詰まる。そして、今にも抱きしめてしまいそうな俺に、なまえは呟く。


「……今日のこと説明するから、部屋片付けるの手伝って」

「りょーかい」



彼女はまだ泣きそうだった。

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