知らない昨日
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しかし、俺にはどうも納得のいかない部分がある。あの暗部の口ぶりからすると、こういった任務は一度や二度では無いはずだ。
紅と家に戻ったなまえが走り去ってから俺達がここへ来るまでそれ程時間は経っていない。にもかかわらず、既に暗部が配置されていたという事は何を示すのか。
「ひとつ確認させてくれる?」
「……何でしょう?」
「……なまえはずっと監視されているんだね?」
辺りは静まり、時折梟と葉擦れの音が聞こえる中、木の側で座り込んだままの男の前に、なまえはゆっくりと歩み寄った。俺達もそれに倣うように近付くと、なまえは一度だけ振り返ってから男に向かって口を開く。
「……これでお互い様ね」
なまえのその言葉に男の目は鋭くなる。そして地面に付いた手を握り締めてはなまえに向かって叫ぶ。
「な……にがお互い様だよ!……陰で利用するだけしていたくせに!」
握りこぶしを地面に叩き付けて歯を食いしばる男は次の瞬間、なまえをキッと睨みつけて立ち上がった。
「知ってたんだろ?俺の家族が人質になってた事。知ってたんだろ?……あいつを助けなきゃ……俺の家族が殺される事……!」
男はなまえの肩を掴んで揺さぶり、なまえを罵り続けるが、当のなまえはそんな男に慈悲の念などはまるで見せない。
「だから貴方は私に近付いた。だから私は、そんな貴方に近付いた」
「なんだよそれ……ふざけんなよ。……俺の家族はどうなるんだよ……」
うなだれる男に向かってなまえは軽く一撃を入れる。するとくぐもった声を漏らしながら男は膝を付いた。
「それは後で聞くといいわ」
この様子を近付くで見ていたのか、どこからともなく暗部の一人が現れ、音もなく男を連れ去って行った。
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