憶に縋る

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危険過ぎるでしょーよ。
囮なんて。


溜め息と共に吐き出た言葉は呆れるというより諦めに近い。


どんな危険な任務でも、どんなに理不尽な任務でも、与えられた任務は絶対だ。それは忍である者ならば解りきったこと。


けれども、これはあまりも危険過ぎるのではないのか。


そう口にした俺に、彼女は窓の外を見ながら言った。


「……大丈夫だよ」


こちらを監視しているであろう、あの暗部のユユという男に視線を向けながら、彼女は静かにそう言ったのだ。


それはまるで、あの男が居るから大丈夫。だから心配する必要なんて無いんだと遠回しに言われているようで、俺は寂しさや敗北感や嫉妬といったものに身体を砕かれてしまいそうになる。




それでも、俺は絶対にそんな素振りを見せてはいけない。忍としても、男としても。


「俺は任務にとやかく言える立場じゃないから、言いたい事は飲み込むべきなんだろうけど……」

「……そうしてもらえると助かる、かな」



彼女との間に、共有できないものが増えていく。それが例え秘密厳守の任務だと理解していても、心に膜を張られていくようで恐くなった。


共有できない事がひとつまたひとつと膜となり、それが段々と重なっていくんだろうか。そうしていつか、それが硬い殻になってしまったら……。


そこまで考えたところで窓の外へ意識を向けた。

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