嫌になる程抱きしめて
(2/7)
それはある日の夕方だった。日も落ち始めたオレンジ色の空を背に、任務を終えたカカシはいつもの様に家路を辿っていた。
今日の夕食は何だろうか。今朝は急いでいてパジャマを脱ぎっぱなしにしてきてしまったから、秋刀魚は期待できないかな……なんて頭を掻きながら、なまえが玄関を開けてくれる姿を想像しながら、カカシはなまえに解るように態と足音をたてて玄関の前に立った。
いつもならすぐに愛しい顔を覗かせてくれるのだが、今日はタイミングが悪かったのか。カカシが待てど暮らせどなまえは中々玄関を開けてくれず、カカシは少し肩を落としながら自ら玄関を開けた。
やっぱり、パジャマはいけなかったかな……。
「ただいまー。なまえー、あのさぁ……」
どんなに小さな事でも積み重なれば大きくなる。だから早々に今朝の事を謝ろうと声をかけたが、なまえからは返事が無い。
嫌な予感がしてキッチンに目をやれば、夕食の準備がまだ途中だったから、愛想をつかされた訳では……無いと思いたい。それでもバスルームやトイレも覗いてみたが、なまえの姿はどこにも無かった。
「買い忘れた物でもあったのかな」
そう考えるのが妥当なんだろうけど、どうも気になり、カカシは部屋の中の匂いを感じ取ろうと僅かに口布を下げ空気を吸い込んだ。
……この匂い。
一人……二人……。
微量だが確かに感じるなまえ以外の匂いに、すーっと臍の辺りに冷たい怒りが集まってくる。それからカカシはすぐさまパックンを口寄せし、なまえの匂いを辿るように命じて外へ急いだ。
「パックン、なまえの匂いは解るか?」
「ここから二時の方角。……三里といった所だな」
「よし、急ごう」
勢いよく地面を蹴り、カカシは夕暮れの里を抜けて行く。固く握り締めた拳には焦りと汗を滲ませながら。そしてちょうど里を出てすぐ、後ろからゲンマが追い掛けて来た。
「カカシ!今、お前の家の近所の子供が、なまえが連れ去られたって話してたんだが、……その様子じゃ本当らしいな」
「……あぁ。ここから二時の方角だ」
足は止めず、さらに速度を上げながらそう言うと、ゲンマは自分も行くと申し出てくれた。
「助かるよ、ゲンマ」
今の俺は何をするか解らないから、俺を止めてくれる人が居た方がいい。こんなに心を乱されるのは久しぶりだ……。
カカシはただ前だけを見つめてなまえの後を追った。
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