嫌になる程抱きしめて

(3/7)
人里離れたとある山小屋。そこは、なまえが夕食の準備をしていた時、突然押し入って来た輩に連れ込まれた場所だった。



「ちょっ……痛いっ!」

「煩い!大人しく言う事を聞けば手荒なマネはしない」


威圧的な物言いに身体を強張らせながらも、なまえは落ち着けと自分に言い聞かせて口を閉じた。


まずは状況を把握しなければ……。


不安と身の危険をひしひしと感じつつもなまえは周りを見渡し、自分をここに連れて来た男達に視線を忍ばせる。



「よし、そこへ座れ」


まずなまえに向かってそう言ったのは一番の大男で、服の上からでも腕の筋肉の隆起が解る、見るからに屈強そうな体格をしている男だった。


そしてもう一人の男の方はと言うと、風貌こそ柔らかそうに見えるが、その大男を顎で使っている。



……あっちがリーダーなんだ。


なまえが心の中でそう呟くと、大男は懐から一冊の本をなまえの目の前に置き、リーダーらしき男に合図を送る。


すると今度はそのリーダーらしき男がなまえの前に座り、表情を崩す事無く目の前の本をめくりはじめると、なまえには不安というより戸惑いが付き纏い始めた。



なにせ、リーダーらしき男が手にしている本は、紛れも無くなまえが書いた官能小説だったのだから……。


「……あの……」


先程大人しくしろと言われたばかりではあったが、自分の本だと解ったなまえの口からは思わず言葉が漏れてしまった。


しかし目の前の男はそれを咎めもせず、なんとも穏やかな口調でなまえに語りかけた。



「少し聞きたい事があるんだ。君がきちんと答えてくれればすぐに解放してあげるよ」

「……な、なんでしょうか」


男の真意は解らなかったが、今すぐにどうこうされる訳では無いと感じたなまえは、きっとカカシが助けに来てくれると信じ、このまま少しでも時間を稼ごうと男の話に耳を傾けた。

すると男は満足そうになまえを見つめ、いくつか質問をし始める。


「まずこの本の中にある飛行機という乗り物についてだ」

「……飛行機?」

「そうだ。それに新幹線。これらはどういう仕組みでできているんだ?」

「……はっ?」


男からの予想だにしない質問に、なまえの顔は引き攣る。


いくら飛行機や新幹線について知りたいと言われても、なまえ自身が生まれた時から当たり前の様に存在していた乗り物を、何の疑問も抱かずに当たり前の様に使っていたのだ。

専門家でも無いなまえが知る訳も無い。


しかしそんな事を知る由も無い男はというと、これは一攫千金のビジネスチャンスだと言わんばかりに熱く語り続けている。



「我々の国は深刻な資金不足に悩まされていてね、何か打開策は無いものかと探っていたんだよ」

「……はぁ、そうですか……」



金策に困っているなら飛行機や新幹線など造れる訳が無いと、男の話を聞いていくうちになまえからは段々と危機感が薄れていき、次第に男を哀れむ様になっていった。



「すみません。私に聞かれても解りません……」


しかしなまえのその言葉を聞いた男は一変する。


「解らない……だと?」



それまでの柔和な態度とは打って変わり、鋭い眼光を放ちながら大男に向かって言葉を荒げた。

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