12月32日


2042年12月31日23時57分
この日、この時世界は変わってしまった。
全ての理が変わってしまった。

東京都 ×××市

「見つけた…これで!これで見れるんだ!新しい世界と新しい力が!!」

高校生の彼女は嬉しそうに、涙を目尻に浮かばせながら、床に書いた数々の文字と魔法陣のようなものを見つめる。

彼女は見つけてしまった。
宇宙に隠された秘密と奇跡を…決して開いてはいけない入り口とも気付くこともなく。

「待っててね皆。これが成功したら皆にも伝えるから…きっと…これで世界はいい方向に変わってくれるから…」

壁に書かれた無数の文字、机に散らばる紙達がその努力を物語っていた。
天才でも秀才でも無いただの…ちょっと二次元が好きな高校生である彼女が、見つけてしまったのだ。

今までの思い出やこれからの未来に思いを馳せ、彼女は描きたりていなかった魔法陣にチョークで最後の言葉を描く。
《世界よ、普遍のその理を書き換えたまえ》
描き終えたと同時に黒く怪しく輝き出した魔法陣。

「やった!成功し…た…?」

成功したと思った。希望が溢れると思った。これで不自由な世界は自由な世界になると信じて止まなかった。
目を見開き、認めたくない現実が目の前に広がる。

抱いた希望を裏切るかのように…魔法陣はボコボコと、不気味な鼓動や気持ち悪くなるようなたくさんのこだまする声を響かせ、うねり、膨れ上がる。

「嘘だ…なんだこれ…違う!こんなのアタシが求めてたものじゃ無いっ!?」

慌てて彼女は魔法陣をかき消そうとしたがもう手遅れだった。

魔法陣から禍々しい手のようなものが足にまとわり付く。ジリジリ、ジリジリと皮膚から何かが無理やり侵入してくるかのように…

「っ〜!!?くっあぁぁぁぁ!!!やめろ!離せ!!!!閉じて!閉じろよぉ!こんなの、駄目!駄目だって!巻き込むならアタシだけにして!!!お願いだから!!」

はらっても落ちないそれに焦り、激痛に苛まれながら横目に見える今にも飛び出そうとする何か達を見る。
その時彼女の本能が悟った。これを出したら世界は、未来は絶望に塗り替えられる。
ならば、ならばせめて………
そう思い、彼女は手を必死に、冷や汗をかきながら必死に伸ばし、魔法陣を消そうとし辿ったが……あともう少しの所で足の感覚がなくなり、手が麻痺し始める。

「あぁ…あぁ……駄目なのに…アタシはなんて馬鹿なのさ…………ごめんなさい。皆…ごめんなさい、お父さんお母さん……アタシは皆を…………」

そのまま、なんとか耐えようとしたものの、ジリジリと侵入して来る何かの感じながら彼女は倒れてしまう。
最後まで愚かな罪を悔やみ…吐き出されるかのように勢いよく吹き出る何かを見ながら…


新しい年が始まろうとした時に起こったこの事件は、《12月32日》とされ、《パンドラ・ディメンション》と名付けられた。

そして、この日の事件を経て、人々は僅かだが個々に一つの能力得て、混沌の世界を生き始める事となる。

ゲートとなった魔法陣は肥大し化け物を生み出し続ける元凶となり、又その影響で世界は理を失い、入り混じり、無秩序な物へと変貌した。

そして…そのゲートが発生した日本はその領土の殆どが消失。生存者は総人口の半分に遠く及ばないほどとされている。

五年後、化け物によって世界人口は約二億にまで減り、能力をもった僅かな人間達は世界を守るため、平衡機関《ジェネシス》を設立した。

世界は更に歩み続ける…

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