その日の夜……。

奏が自室でゆっくりしていると、壮五が紅茶をもってやってきた。

「お邪魔するよ。」

「どうぞ…数日、寂しかった?」

「あはは、そりゃあ寂しかったよ……。環くんがスタジオで暴れた時も、奏がいたらな…って少し思ったよ。」

「別に私いてもいなくても一緒よ。紡ちゃんだっていたんでしょ?」

「そうだけど…最近の環くんは、奏にべったりなような気がして。」

「え?」

「2人の時に言ってたんだ。『そーちゃんには悪いけど、俺もかななの事すんげー好き!母さんみたいだから。』って…。正直最初は何言ってんだって思ったけど……。環くんのお母さんとの思い出って確かに少ないんだよ……。甘えれなかった分、環くんなりに奏の事大切にしてるんだよ。」

「いきなりお母さんになっちゃったかー……。でも、嬉しいな……。実家に帰って思ったんです。母の愛って偉大だなって…。」

「……そうか。」

「壮五もいつか、ちゃんとお話しできる日がきますよ。」

「だといいね……。」

すると、コンコンと部屋のドアが少し荒っぽくたたかれた。

「ふふ、噂をすればかもよ?……どうぞ。」

「かなな!!…あれ、そーちゃんもいんの?」

「ご、ごめんね……。」

「いや、いんだけどさ……。これ一緒に見ようぜ!そーちゃんも好きなやつ!」

環が出したのはテウのファーストライブDVDだった。

「え!?それ見るの!?本人の前で!?」

「いーじゃん!ほい、そーちゃん!再生して!」

「こら投げるな!大切に扱って!……再生するよ?」

「もー……どうにでもなれ……。」

デビュー曲の極楽浄土が始まると
会場のペンライトはすべて
ホットピンクに変わった。

『みなさーん!ありがとうございまーす!』

『いええええええええええいい!』

♪〜
月明かり昇る刻
灯る赤提灯
祭囃子の合図
ふわり 蝶が 誘い出す

♪〜

「環くん!この蝶が誘い出すっていうのはね!テウの事で!」

「あー、そーちゃんうるさい…!」

「解説付き……。」

♪〜
(ちょいと覗いて見てごらん)
迷い込めば 抜け出せない
(楽しいことがしたいなら)
♪〜

「おいでませ極楽浄土ー!」

「ほんっと!そーちゃん黙って!」

♪〜
歌えや歌え心のままに
アナタの声をさぁ聞かせて
踊れ踊れ時を忘れ
今宵 共に あゝ狂い咲き
♪〜

「……また、ステージに…か…。」

歌彦の言葉を思い出した奏は
笑いながら、壮五の手をとった

「どうした?奏。」

「踊りましょ!…デビュー曲は一番踊り込んだから、まだできると思う!」

「奏……、うん!」

「お……おぉ!!!かななすっげー!!!」

翌日、みんなは心を一つにし、社長に頭を下げに向かった。

みんなが謝りに行くと、社長はみんなを連れて
IDOLiSH7の原点に連れて行った。

「ここって……、昔、路上ライブしてたところ…。」

そこには夢を追いかけるバンドが
路上ライブをしていた。

「上手だね。CDもらうよ。」

「はい、ありがとうございます!」

「応援してるよ、頑張って。握手してくれる?」

「はっ、はい…。」

「ありがとう。」

社長はCDを買ってくると、7人に伝えた。

「ここには、まだ夢に届かない昔の君たちがたくさんいる。彼らが死ぬほど憧れている、素晴らしい舞台に、君たちは立ってるんだ。それがどんなに光栄で、どんなにありがたいことなのか、忘れちゃだめだよ。」

「……はい。」

「昔の君たちの事を…。昔の君たちが描いていた夢を、もっと大切にしてあげなさい。もっともっと、その夢に届いた自分を誉めてあげなさい。」

そういうと社長は、新人賞候補になったことの感想を聞いた。

「七瀬くん。」

「嬉しいです…。」

「二階堂くん。」

「嬉しい…。すごいことしたなって思います。」

「そうだよ!君たちはすごいことをしたんだ。汚い言葉や、悲しい誤解なんかじゃ吹き飛ばないくらい、すごいことをやりとげてるんだよ。」

「…社長……。」

「僕は君たちを誇りに思う。」

「……はいっ…!」

「君たちも誇りに思って。」

「…うす。」

「数か月前の君たちが、ずっとずっと、頑張ってきたことを疑わなくていいんだ。」

「…イエス。」

「おめでとう。僕から贈る言葉はそれだけだ。」

「お父さん……。」

「社長…。」

そこにファンの女の子がやってきた
JIMAにノミネートされたことについて
おめでとうとかけられた言葉に
みんな背筋が伸びていくのを感じた。

JIMAにノミネートされた以降は、今まで以上に
仕事も増え、みんな大忙しだった。

ミスター下岡の件に関しては
お許しをいただけたようで…
大和と壮五と奏が、お詫びの代わりにゴルフのお供をすることにもなったようだった。

他の5人は、ミスター下岡の家で行う忘年会で一発芸を披露すると約束したようだった。

ゴルフのお供の帰り……

「「「………はぁー!」」」

「こーゆーのは慣れてるって思ってたけど……やっぱり緊張するなぁ……。」

「そうですね……。久しぶりにゴルフもしました…。」

「2人ともお疲れ様です…。」

「奏も大変だったろ?キャディーさんが一番大変だ…。」

「いえ、私は別に…。」

「それに、ゴルフクラブのセット2つも用意してくれてありがとう。」

「あまりの高級品でミスター下岡さんもびびってたぜ!」

「家のあまりものですから…気にされずに!お父さんもそのまま差し上げると言ってましたし。」

「「これを!?」」

「お兄さん、数日後には売ってるかもよ?」

「構いませんよ!」

「今日はお風呂にバブいれませんか?」

「ソウ……それはとてもいい案です。」

「賛成です……。」

寮に帰ると、みんな食事の準備も終わらせてテレビを見ていた。

「ただいまー。…お前ら何見てんだ?」

「……懐かしいですね!」

「壮五、これなんですか?」

3人も加わってテレビを見始めた。

そこにやってきたのは紡だった

「こんばんは、失礼します。夕飯余ったので、良かったら…。皆さんなに見てらっしゃるんですか?」

「ああ、マネージャー。去年のJIMAの映像だよ。」

「あ…。」

そこには1年前のTRIGGERが、心から嬉しそうな顔で映っていた。

「……この後、宣言通りに、TRIGGERはブラホワで勝者となりました。」

「すげえなー…。ドラマみたいなやつらだ…。」

「でも、普通の奴らみたいに、感激してたな。」

「当たり前だよ。JIMAの新人賞だよ。ゼロが世の中に出てきてから、日本のミュージックシーンの大半は、実力派アイドルが占めてる。毎年、数多デビューする実力のあるグループの中で、1年に1組しか選ばれない新人賞を受賞したんだから……。」

「まあ、そうなんだけど。あいつら、いつも格好つけてっから。なんの苦労もしないで、涼しい顔して、ずっと今の位置にいるんだと思ってた。だけど、嬉しそうな顔見たら、こいつらなりに頑張てったんだろうなぁって…。」

みんなそれぞれの思いを胸に…
TRIGGERとの真っ向勝負に燃えた。

「みなさん、気合入ってますね!」

「あ…。ありがとうマネージャー。この肉じゃが、マネージャーが作ったの?」

「はい、お口に合うかわかりませんけど…。」

「うん、うまいわ。」

「環!いただきますくらい言えよ!」

「あはは、いいんです!たくさん食べてください。」

「……?壮五?どこいくの?」

「ちょっとね……、みんなにいいもの持ってくる。」

「????」

「なんだ?ソウのやつ。」

「王様プリンかもしんねぇ!」

「そんなわけないでしょう。」

急いで戻ってきた壮五の手には
DVDがあった。

「ソウ、それなんだ?」

「5年前の……JIMAの録画です!5年前のJIMA女性新人賞…お忘れですか?みなさん。」

「え????」

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