01 「ヒョードル!ヒョードル!!!ちょいこっち来てー!!!」
「何っすか?一成さん。」
スマホをブンブン振る一成に、十座は不思議そうな顔をしながら
近づいた。
「ヒョードルって、こういう甘いもの好きだよね!!!」
一成のスマホには、「キラキラデカ盛り!インステ映え間違いなしのフルーツパフェ」と書かれた記事に
大きなパフェの写真が載っていた。
「好きか嫌いかで言うと…好きっす。」
「実はこの特大パフェ、完食できたら代金無料なんだって!どう?行かない??」
「……写真ではさほど大きそうには見えないんですが……。」
「総重量16キロ!ちなみにチーム戦可能で、組むならで4人までなんだって!」
「…頑張っても1人4キロって事っすね。しかも失敗の場合は料金2万円って書いてありますよ?」
無理なんじゃないか?と言った顔をした十座に
一成は「フッフッフー…。」と笑い出した。
「われらMANKAIカンパニーには強ーい強ーい味方がいるっしょ…?」
「???」
−−−−
−−−−
−−−−
チャレンジ当日。
十座は学校の帰り、待ち合わせの時間に
例のデカ盛りの店に入った。
「…あ!ヒョードル!こっちこっち!」
「一成さん、お待たせしま…あぁ?」
「あぁん?んだよ、兵頭……。」
「目が合ったら喧嘩かよ……。」
一成と一緒に待っていたのは
万里と心だった。
「一成さん、味方って摂津の事っすか…?」
「んー…セッツァーも食べそうだけど、ここぴすごい食べるんだよね!」
「でーかもり!でーかもり!」
「すでにテンション高いんだな…茅ヶ崎。」
「そりゃあもちろん!」
「つーか、なんで摂津もいるんだよ、テメェそんなに甘いもの得意じゃねぇだろ…。」
「はぁ?テメェが食うっつってんのに、俺が食えねぇわけねぇだろが、ハゲ!」
「んだと?」
「やんのかコラ。」
「万里さんも、十座さんもつまみ出すぞ……。」
「「……ッス。」」
「おお!きたっぽいよー!」
スマホのカメラをかまえた一成は
テーブルにドン!と置かれたデカ盛りに
「おおお!!!!」と驚きながら
写真を撮り始めた。
「では、制限時間は40分です!よーい…スタート!」
「んじゃ、食うか。」
「だな。」
「まってまってー!インステ用にみんなで撮ろうよー!」
「時間もったいないじゃないですか!!!!」
心は一成の言葉を完全無視して1人
黙々と食べ始めた。
「あぁああー!パフェー!!!……でももぐもぐしてるここぴも可愛いからオッケー☆」
フルーツとアイス、生クリームのオンパレード。
最下層にはたくさんのカステラと生クリームとコンポートが敷き詰められていた。
「んー!見た目もいいけど味もいい感じじゃん!」
「生クリームがくどいが…フルーツあればなんとか行けるな。」
「もっ…もっ…。」
「もっもっもっ……。」
「……ヒョードルもここぴも無言だね……。」
「心は基本、何でも食うからな……。兵頭のバカ舌には着いていけねぇが……。」
「うまいな……。」
「デカ盛りっていうから、盛ればいいでしょ感で味はそこそこかと思ってたけど……普通においしい……。」
「ああ、このイチゴのアイス。手作りらしいぞ。」
「だからですね…。程よい酸味でパクパクいけちゃいますね。」
「……食リポまでしやがってる……。そう言えば、一成も食うのな。」
「んー?そうだよん!俺、胃下垂だから結構食べるよん☆」
「ほぉー…。確かにほっせぇ割には夕飯も結構食うしな。」
開始から20分。
万里、十座の手がどんどん
ゆっくりになっていった。
「セッツァーもヒョードルもだいじょーぶ?!」
「俺も…2キロ近くは食えたはず……。おい、兵頭。」
「俺も……2キロくらいじゃないか?」
「はぁ?お前馬鹿か!!!テメェは1.8キロくらいだろ…。」
「ヒョードルもセッツァーも大健闘ー!」
「ってことは今の所、俺らだけで7.5キロくらいか…?」
「一成、安心しろ……。心が俺らの分も食うから……。」
「んー…まあ、ここぴの食べるペースも考えて……いけるっしょ!」
周りの客は「いや、これは無理だろ…。」といった顔で
4人の席を見ていた。
中には「このデカ盛り、完食したやついないってよ…。」
という、絶望的な情報まで流れてきた。
「おい、兵頭!そのバカ舌遣い時がきてんぞ!食え!」
「……無理だ。」
「兵頭ーっ!!!!!!!!」
黙々と食べる心は一言
「寒くなってきた……。」と呟いた。
「おい、心。大丈夫か?」
「寒いよー……。アイス地獄……。」
万里は制服の上着を心に羽織らせて
肩を擦った。
「おい、無茶すんな……。無理なら2万払えばいいんだから。一成が。」
「オレじゃん!!!!ぇえー?!まさかの戦力が減っちゃう系?!」
「……すみませーん!」
心は手を挙げて、店員を呼んだ。
「はい、どうなさいましたか?」
「ホットミルクティー3杯追加でお願いします!」
「「「はああ!?」」」
「え?だって寒いから、体あっためなきゃ……。」
「ならお湯でいいだろ!!!んな胃にたまるような飲み物頼んでんじゃねぇよ!!!」
「ここぴ!?え!?ここぴ!?」
「……正気か?」
「え、うん…正気。あとフライドポテトもお願いします。」
「ちょいちょいちょいちょい!2万円までだぞ!?一成に払えるのは!」
「失礼な!!!でもタダならタダがいいんだけど……。」
「甘いのばっかりで飽きてきちゃった……。」
「飽きてきちゃった!じゃねぇよ!!!」
「てか3人とも安心して?私まだいけるから!そもそも現時点で私もカズくんも結構食べてるし。残り約5キロくらいじゃない?」
「まじか……。」
「20分で5キロでしょ?」
「いや、プラスミルクティー600mlとフライドポテトが数グラムなんだが……。体調悪いなら無理すんなって…心配になんだろ。」
「万里さん……私食べるから……。」
「………なんだその訴えるような顔……。使いどころ間違ってんぞ……。」
周りの客も、「これは……。」と逆に
20分後が気になってきたようだった。
「心、無理はすんな。無理なら俺が食う。」
「セッツァー…かっこいい……。」
「一成!お前も頑張れ!」
「茅ヶ崎……。行けるところまででいいぞ。」
「任せてください!十座さん!」
店員が、少し引き気味にフライドポテトとミルクティーを持ってきた。
「んじゃ、いただきます……。」
小皿にアイスをよけて、温かいミルクティーをかけながら
アフォガード状態で食べ進み、難関ブリザードアイス地獄を突破した。
「……え、ここぴ、すごくない…?その方法があったか!!!」
「食うとは思ってたが、こんなにか……。」
「あんだけ寒いつって震えてたし……。体調崩したかと思ったけど……。」
万里が心配そうに「寒くねぇか?」と聞くと、心はコクコクと頷いた。
「…ハハッ、こりゃこいつ食うな!!!」
「え、マジで!?マジで食べちゃう!?」
「すごいな………。」
「こいつの食いっぷりをずっと横で見てきたけど、これは食う時の顔してる。」
まさか!?と言わんばかりに
ギャラリーも、心のスプーンの動きに目を止めた。
「……カレー用のスプーン欲しい。」
「りょー。……っさっせーん!カレー用のスプーン借りれますかー!?」
「た、ただいまー!!!」
残り5分となった頃、ぎゅうぎゅうに押しつぶされたカステラの層も
もう少しで終わるところまで来た。
「ここぴスゲー!俺もラストスパート頑張っちゃうよ!」
「茅ヶ崎!一成さん!いけ!!!」
「いいペースだぞ!心!一成ぃ!」
「ん!……んん!?」
「ど、どうした!?」
「……最後の最後に水まんじゅうが6つある……。」
「……掘り進めたら、出てきた鉱石かよ……。」
「水まんじゅう…きつくない!?」
「大丈夫か?」
「………いける。」
「まじかよ……心、俺も1つ食う。」
「……オレは2つ食べるよ!」
「俺も1つ貰うぞ……。」
「みんな……はいっ!2つくらいならすぐ終わっちゃいます!」
「「「「せーのっ!」」」」
1分時間を残して、無事完食となった。
4人のテーブルには
惜しみない拍手が送られた。
「「すげー!!!!!」」
「あの子、小柄2人が、ほぼ食べちゃったよ!」
「しかも追加メニューありでだぞ!?」
「すっご……。」
店員からも、拍手が送られ
記念に4人の写真を!とお願いされた。
「まぁ、いいんじゃねぇの?」
「だねー!はいっチーズ!」
「…へぇーい!食べたあああああ!!!!」
「茅ヶ崎お疲れ。一成さんも、お疲れっす。」
「ったく…さすが心だな。兵頭じゃあこうはいかなかったな!」
「あぁ?てめぇもそんなに食えてなかっただろうが。」
「テメェみてぇに甘いもんばっかりに対応してる口じゃねぇんだよ!」
「お前、さっきと言ってることが変わってるぞ!」
「っるせぇ!だまれ兵頭!!!!!」
「はいはいはいはい!セッツァーもヒョードルも喧嘩しないのー!」
記念写真はしばらくの間、店内に飾られたとか。
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