02 万里が談話室に行くと、テーブルでコーヒーだけを飲む心がいた。
心配そうに声をかける臣は、万里に気づき
「あぁ、おはよう…!」と微笑んだ。
「臣、心、はよー…どうしたんだ?」
「心が朝ご飯はいらないって言うんだ……。」
「お、おなかすいてないから……。」
「はぁ?…朝ご飯食わねぇで途中で飯!って言っても買ってやんねぇぞ!?」
「…うん、いいよ……。」
「「???」」
委員会活動があるからと、咲也と真澄は先に登校していたので、万里と心は2人で久しぶりに学校まで向かった。
「………なんかあった?」
「え?」
「顔色悪いぞ。」
「……怖い夢見た。……怖いっていうか、昔の夢……。」
「中学の時のか?」
「−−っ!…そう。」
「はぁー……。気にすんなって言ったろ?昔は昔だ。んな事言ったら俺なんか毎日気にして落ち込んで生活しなきゃなんねぇぞ?」
「……うん。」
「……心は可愛いよ。美人で優しいし気は利くし、頼りになるし、俺にはもったいないほどじゃねぇかって思う時もあるし?…でも俺が選んだ女に間違いはねぇとおもってっから。」
「万里さん……。」
「俺の事好きっしょ?」
「好き。」
「俺の好きなものは好き?」
「好き…。」
「ん、なら自分の事悪く言うな。俺が悲しくなる。」
「それはヤダ…。」
「だろ?自分の好きなものは好きでいいんだよ。……気分転換に今日の帰りもどっか行くか?天馬と一緒にカラオケ行くか?」
「……うん、万里さんありがと。」
「お、おう……へっ、笑ってる方がもっと可愛いぞ。」
万里は少し照れながら、心の髪をクシャクシャと撫でた。
放課後。
万里は職員室に用があるからと、先に駅前の待ち合わせ場所まで心は向かった。
「……まだかなー……。」
「……あれ?茅ヶ崎だよね?」
「え?」
心が声のする方を向くと、そこには
中学時代の例の男子5人がいた。
「久しいじゃん。元気してた?」
「う、うん……。」
「つーかお前、化けたなぁ、めっちゃ美人じゃん。」
「いいにおいするしな!」
「俺ドストライクかも……。」
「俺もめっちゃタイプだわ……。」
「1人?」
「……うん、待ち合わせで……。」
「でも周りだれもいないけど…本当に待ち合わせ…?」
「そ、そうだけど……。」
(どっか行けよ!クソ野郎がっ!!!)
「俺たちと遊ばない…?いやぁ、中学の時はマジごめんね?次は……優しくするからさ……。」
1人が心の肩を持って、抱き寄せると
心は咄嗟に突き放した。
「…っ、やめてってば!」
「…ったぁ……。おいおい美人になって調子乗ってんのかぁ?」
「こんだけ美人なら、引く手余多だろうしなぁ、茅ヶ崎ぃ!」
「その男の数の中に俺らも入れてよぉ……。」
「どうせ毎晩男とっかえひっかえだろ!?お前、昔っから可愛かったしな!」
「…嘘ばっかり…っ。不細工って言ってたのどこのどいつよ!」
「あれは、言っとかねぇと、女子から嫌われっからだよ。まぁ、正直あいつらの方が見苦しいほど不細工だったけどな!」
「ヤれればいいくらいにしか思ってねぇよあんなブス!」
「「「「あははははは!!!」」」」
「……それはちょっと、ひどいんじゃない…?」
「あ?お前、いじめてた奴ら庇うのか?」
「……確かにいじめられてたけど、だからと言ってそこに便乗して叩くことは出来ないし、女の子はみんな可愛いって言ってもらいたい生き物なの!……あんたたちみたいな下世話なことしか言えない男の方が不細工よ!」
「…おい、茅ヶ崎。言ったな?こっちこい。」
「…ちょ、離してっ!!!!」
心の手首をつかんで、路地裏に連れ込もうとしたところだった。
「おいおいおいおい……テメェら、誰の彼女に手ぇ出してんだ…?あぁ!?」
「誰だ!?」
5人が振り返ると、万里と十座と天馬がいた。
「お前誰だよ!こっちは今からお楽しみなんだよ!」
「はぁ!?テメェら人の女で何しようとしてんだよ!!!」
「摂津……やるなら加勢するぞ。」
「おぉーおぉー、兵頭もちぃたぁ役に立つみてぇだな。」
「お、俺はここで待ってるな…?」
「ははははは!!5対2ってか!?てめぇら馬鹿にしてんのか!?」
1人が、ポカッ…と十座と万里を殴ると
ニヤッと笑った。
「おーいてぇー…今殴られたよなぁ、兵頭?」
「ああ、すごく痛かったな摂津。俺も殴られた。」
「「正当防衛だな。」」
万里と十座が勢いよくケンカを始めようとした瞬間
「やめなさい!!!」と心は大きな声を出した。
「っ、心!?」
「やめなさい2人とも……。こんなやつら殴る価値もない……。」
「で、でもお前……この状況わかってんのかぁ!?」
「……おい、てめぇら5人……。」
「「「「「っ!?」」」」」
心は少し低めの声で、5人に話しかけた。
「よーく見てみろ……テメェらのポンコツパンチで倒せる奴らじゃねぇ……。わかったなら私を離せ。」
「は、はぁ?何言って……っ!?」
「ま、まさか…っ!?」
「O高最強!兵頭十座!?」
「こ、こっちは…花学最強、摂津万里だぞ!」
「は!?へぇ!?せ、摂津万里が、茅ヶ崎の彼氏っ!?」
「ど、どどどどどういうことだよ…っ!?」
「…そうだなぁ……、『引く手余多』なんだよ……散れっ!!!!」
「「「「「わああああーっ!!!!!!!!」」」」」
5人は逃げ出した。
「……お前なぁ……。」
「すごいな、茅ヶ崎……。」
「江戸城無血開城かよ……。」
万里は少し呆れた表情、十座は感心しているようだった。
そこにひょこっと現れたのは天馬だった。
「お、おい大丈夫か!?」
「あぁ、大丈夫だ。……心が1人で全部散らせやがった。」
「はぁ!?」
「拳を上げずに相手を倒すとは……すごいな、茅ヶ崎は。」
「……3人のおかげです。ありがとうございました。」
心は、優しく笑った。
「ったく……無茶すんなよ……。」
「万里さんが言ったんじゃないですか。『俺の好きなもの悪く言うな』って。あそこであいつら殴ったら、私の好きな万里さん達が嫌いなあいつらと同じレベルになるのが嫌だったんです。」
「…へっ、バーカ!」
「茅ヶ崎らしいな。」
「とりあえず無事でよかったな!…っし!カラオケ行くぞ!」
「わーい!!!!」
「つーかなんで兵頭もいんだよ!」
「あぁ?天馬に誘われたんだ。」
「はぁ!?…まぁ、いいけど?」
「万里さん……ありがとう。」
「何が?」
「助けてくれて……。もうあの頃の事は思い出しても、私怖くないよ。万里さんがいるから。」
「っ…///へいへい///」
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