01


「テスト期間中は、さっさと帰れるのがいいよなぁ。」

「みんな今頃帰ってお勉強でしょうけどね……。」

「んぁ?俺らは勉強とかしなくてもよゆーっしょ。」

「まぁそうなんだけどね……。」

テスト初日が終わり、早上がりの2人は
帰りにいつものごとくカフェに立ち寄った2人は
テラスでコーヒーを楽しみながら、のんびりとしていた。

「…あぁー…、癒されるぅー…この木陰のテラス…時間がゆっくりすぎてゆくー……。」

「確かにそうだな。こういう雰囲気の場所は心好みだしな。」

「万里さんは嫌だった…?」

「俺は心がいたらどこでもいいんだよ。」

「ひゅぅー…イケメンは言うことが違うなぁー…。」

「お前、たまにはもう少し可愛い反応しろよな。」

「したらしたでキモいって言うくせにー。」

「はぁ?俺がいつ言ったよ。」

「あれぇー…?言わなかったっけ?…言わなかったか……。」

「お前、木陰の気持ちよさに意識飛びかけてるだろ。」

「そうー……。」

心がうとうとしはじめた頃、いきなり大きな音で電話の着信音が鳴った。

「うひゃあああ!私か!」

「お前の音だろ…。」

「……お姉から…?珍しいなぁ……。もしもし??」

『あんた今どこ!?』

「今?……天鵞絨町公民館の近くのカフェ。」

『すぐ帰ってきて!』

「え?なんかあった?」

『おじさんが久しぶりにこっちに来るから、すこし顔見せるって。至にはもう連絡してるから。』

「え?でもお兄今日、仕事だよ?」

『途中抜けてくるって。だからあんたも帰って来なさい。帰りはどうせ至と一緒に帰ればいいんだから。車で帰ってくるって言ってたし。』

「んー……まぁ少しの時間よね?」

『そうね。そんな長くないと思うよ。』

「わかったぁー…しばしまたれい!参る!」

『はいはい……。じゃあね。』

「……ってなわけで、万里さん。私実家に帰らせていただきます……。」

「いや、いきなり熟年夫婦感出すな。」

「親戚の叔父さんが久しぶりに帰ってくるから、少し顔見せるだけです。…なので、その………。い、一緒にきませんか??」

「………は!?」

「お兄も帰るみたいですし、よかったら一緒にどうかなーって……?万里さん???」

「…ちょ、待って……。心の準備が……その……。」

「???」

真っ赤にした顔を、両手で隠しながら
万里は深呼吸をしていた。

「……緊張する……。」

「そ、そんなに構えなくても……。今までの彼女さんのお家とかも上がったことあるんじゃないですか??」

「いや、あるけどよぉ…んな、挨拶みてぇな上がり方したことねぇし、その……なんつーか……。」

「え?」

「……しょ、将来ちゃんと考えてぇ相手の親に挨拶とか……き、緊張するだろが……。」

こんなことなら、休憩なしのマチソワ公演の方がましだわ……と万里は呟いた。

「……万里さん、あ、ありがとう…ございます……その……。」

「お、おう……。」

「い、行きましょうか……。落ち着いたらでいいので……。」

「………っし、行くぞ……。」

「ッス……。」

「お前!さっきの可愛さはどこに行ったよ!!!」

「…ふふっ、少しは緊張ほぐれましたか?」

「……はんっ、一丁前な事してんじゃねぇよ!」

万里は心の髪をクシャクシャと撫でて、席から立ち上がった。

電車を乗り代えながら少し離れた
茅ヶ崎家まで辿り着いた。

「…ここです。」

「おおー……、一般家庭って言ってた割に立派な家だな。」

「そこそこに大きいです……。どうぞ。」

心は玄関を開けると
大きな声で「ただいまー」と言った。
するとリビングの扉らしきところから、スーツのジャケットを脱いだ至が出てきた。

「心おかえり、遅かった……え、万里?」

「っす……。」

「2人でカフェにいるときにお姉から連絡あって……。」

「なる、そりゃ連れてくるわな。……まぁ、上がりなよ。」

至はそう言いながら、客用のスリッパを用意した。

「あざっす……。」

「え、何?万里緊張してるの???」

「悪いっすか!?」

「いや、別にいいんだけど……。こんな万里久しぶりに見るから、ちょっとメシウマ。」

「はぁ!?」

「まぁまぁ、リビングに、もう姉貴と母親と父親いるから。……心帰ってきたよ。」

至は、リビングの扉を開けながら、中に入っていった。

「ただいまー。」

「あ、あと、心が紹介したい人いるんだってさ。……万里入んな。」

「どうぞ、万里さん。」

「え、あ……その……。」

きょろきょろとしながらリビングに入る万里を見て、姉は「嘘、イケメン……。」と呟いた。

「心から言いな?」

「うん……。紹介するね?彼氏です。」

「せ、摂津万里と申します……。」

母も父も目を丸くしていたが
にっこり笑って「そうなの!」と納得したようだった。

「あらぁー、よく来たわね!…あ、お茶淹れるわね!」

「いやぁー…、心に彼氏かぁ…。立派な子じゃないか!ハッハッハ!」

父は嬉しそうに、座っているソファーの自分の隣をポンポンと叩いて「座りなさい!」と言った。

その頃心は姉に捕まっていた。


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