02 「心っ!?どういうこと!?」
「ぐへぇっ…!だって、2人でカフェにいるときにお姉が電話してくるからぁー……っ!」
首を絞められている心は、姉の腕をトントン叩きながら「ギブ!ギブ!」と苦しそうな声を上げた。
「…にしても、イケメンじゃない……。」
「っぱぁー…解放された……。イケメンだよ?優しいし…頭いいし。スパダリ。」
「ス、スパ?え?なんて?」
「スーパーダーリンの略。」
「ああー……。なるほどね…。至とも知り合いなの?」
「知り合いも何も…、劇団で知り合ったから……。」
「わぁお……。」
キッチンからは人数分のお茶を持ってきた母が、満面の笑みで万里に話しかけた。
「あらぁー……、心ちゃんの初めての彼氏よね?ねぇ?至?」
「え?うん、まぁそうだね。」
「あらあら、素敵な子ねぇー……モデルさんみたい!」
「あ、ありがとうございます……。」
「母さん、万里褒め慣れてないから。」
「至さんっ!そんな事はねぇっすよ!」
「あれ?そうだっけ?」
「ん?なんだ、至とはもう仲がいいのか!これは安泰だなぁ!」
「お姉……。お父さんもお母さんも妙にテンション高いんだけど……。」
「あんたが初彼氏連れてくるからよ……。」
しばらくいじられた万里だが、受け入れられている事がわかり、どこか安堵しているようだった。
数分後には、親戚の叔父にも顔を合わせることができ
「心の結婚報告か何かかと思ったよ!」と笑われ、万里も心も顔を真っ赤にした。
「みんな元気そうでよかったよ。……じゃあ兄さん、また来るよ。」
「ああ、今度はみんな連れてきなさい。」
「そうするよ。……心ちゃんも、わざわざごめんね。」
「いえ、叔父さんも元気そうでよかったです。」
「次、会うのが2人の結婚式にならないように、顔出すよ。」
「お、叔父さん!?」
「あははは!!!それじゃあね。」
叔父が帰ると、至も
「じゃあ俺もそろそろ帰ろうかな。」と言いながら荷物をまとめ始めた。
「至、もう帰るの?」
「ん?ああ…夜稽古あるからね。」
「あ、俺もっすわ……。心は?」
「今日は春組の稽古に着くよ。」
「至……真面目に劇団員やってんだね……。」
「姉貴、失礼な……。」
「心ちゃんも……、こんなに積極的になって…うぅ…。」
「え、泣くとこ??」
「……じゃあ、そういう事だから俺ら帰るよ。…万里も心も荷物持って。」
「へいへい。……いきなりすみませんでした。お邪魔しました。」
万里は玄関で靴を履き終えると、振り返ってお辞儀をした。
「大したお構いもできませんでして……。万里くん、よかったらまた遊びに来てね?」
「心の事を、よろしく頼んだよ。」
「はい。」
「……じゃあ、私も行くね。」
3人は玄関から出て、至の車に乗り込んだ。
「………ぷっははははは!万里ぃ!お前すっげぇ緊張してたろ?!」
「はぁ!?悪いんっすか!?」
「いやぁー…悪くないけど……、すっげぇ丁寧だったから笑えた…っ!」
至は人差し指で目じりの涙をぬぐいながら
「腹いてぇ…。」と笑い続けた。
「……ったく……。至さん笑いすぎっす…。」
「ごめんって。……心寝たでしょ?」
「そう言えば静か……、あ、寝てる……。」
「やっぱりな。よく車の中で寝るんだよ。静かだったら大体そう。」
「……ふーん…………。」
万里は優しく心を撫でた。
「……至さん、次は俺んちに心連れて行ってもいいっすか?」
「………いいんじゃない?いずれ挨拶に行くのは変わらないわけだし。」
「………そうっすね。」
寮まで少し遠く
万里は車の中から、大きく赤い夕日を見た。
前へ|次へ |