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杉浦すぎうらくん達の接客をしていると、時間が過ぎるのはあっという間だった。そろそろ仕事をはねる時間だ。事情を説明して杉浦くん達には一足先に帰ってもらった。というか、「酔っているんだから話を聞いても情報が整理できないでしょ?海藤かいとうさんも寝ちゃってるし」と私が半ば無理やり説得したような形だ。それでもなお、「一緒に帰る〜!」と言って聞かない杉浦くんに「何のために変装してるのか忘れちゃったの?」と言うと、彼はやっと本来の目的を思い出し「じゃあ帰る…」と言って海藤さんを担いでタクシーに乗り帰って行った。まるで駄々っ子みたいだったな…。

「おや、杉浦様は帰ってしまわれたんですね」

一部始終を見ていた長谷川はせがわ店長が私に言った。

「やっぱりバレてたんですね…。ご迷惑をおかけしてすみませんでした」

私が言うと、店長はフフフと笑ってこう言った。

「いえいえ、私としても、とても面白いものを見させて頂きました。よほど名前さんのことが心配だったんでしょうねえ」

「いえ。多分、珍しい物見たさだと思います」

「おや、名前さんはそのようにお考えでしたか」

ほかに何があるんだ?と思いつつ、私は川村隼人かわむら はやとの情報を聞き出すことを優先した。

結論から言うと、川村は広田明美ひろた あけみの”殺害”に関してはシロだった。しかし、キャバクラで話していた内容から察するに、女の敵であることは明白だった。

「川村様は、当時ひどくお酒に酔っているご様子で、このようなことを言っておいででした…」

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—広田明美殺害事件当日、某キャバクラにて—

「隼人ぉ〜、お前最近羽振りいいよな〜」

「いやさあ〜、良い金稼ぎの方法見つけてよぉ〜!」

「なんだよそれ?」

「おばさんを口説いて金蔓にするの。まじチョロいぜ〜。ちょっと褒めればすぐ金をくれるからな、この間なんて本気になって合鍵渡してきたんだぜ?」

「それ…やばくね?」

「何言ってんだよ。自分の息子虐待してた毒親だぜ?これくらい大したことないだろ」

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「…川村様の口ぶりですと、他にも何名か同じような女性がいらっしゃる印象を受けました」

その発言を受けて、私はこう返した。

「すごく鮮明に覚えてらっしゃるんですね」

「はい、実は一人娘がおりまして。女性が被害者になる話題にはつい関心を持ってしまうのですよ。それに虐待という言葉も聞こえてきましたし…。最近多いでしょう?その手の悲しい事件が」

確かに最近、虐待によって子供が死亡したニュースも多い。続いて長谷川店長は、思い出したかのようにこう言った。

「そういえば、川村様は親心会しんしんかいの御膳立てもあるから食いっ逸れることもない、とも仰っていましたね」

「親心会?」

「はい、ご存じないですか?『親と心の会』という、かつて虐待をしていた親たちの更生のためにカウンセリング活動を行なっている団体です」

そういった団体もあるのか。しかし、その団体のお膳立てとはどういうことだ?何かしら関係があるのは間違いなさそうだが…。

「川村とその親心会の関係について、何か他に聞いたことはありませんか?」

「申し訳ございません。私も業務をしながらでございましたから、これ以上は何も」

「…分かりました。ありがとうございます」

とりあえず、八神さん達に情報共有をしないと。そう思った矢先、私のスマホに知らない番号から電話がかかってきた。
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