18

依頼の電話か?と思い、私は電話に出た。

「はい、便利屋の苗字です!」

「あ、もしもし、八神やがみだけど。そろそろ仕事上がったかなと思って」

「はい、仕事はもう終わってて、今ちょうど長谷川はせがわ店長から話を聞き終えたところです」

タイミングが良すぎてちょっと怖いです、とは言わないでおいた。

「そっか!さっそく話を聞きたいところだけど、今日はもう疲れたでしょ?明日また九十九の事務所で話そう。本当なら送って行きたいところだけど、俺もちょっと用事があってさ」

「わかりました。…大丈夫です!ありがとうございます」

「そういえば、今日はちゃんと平常心でやれた?」

ちょうど口に出そうとした話題を、八神さんが振って来る。

「そんな訳ないじゃないですか!二人とも本来の目的忘れちゃって大変だったんですよ?海藤かいとうさんは寝ちゃうし、杉浦すぎうらくんはなんか質問攻めしてくるしで…」

私がそういうと、八神さんは笑いながらこう言った。

「まあまあ。悪かったって。杉浦がどうしても行くって聞かなくてさ。何はともあれ、あいつのことよろしく頼むよ」

何か含みがある言い方だが、真意は分からない。

「…?まあ、皆さんとはこれからも仲良くしていきたいとは思ってますよ…?」

「…なるほど。これは時間がかかりそうだな。」

「はい?」

「いや、なんでもないよ!じゃあ、また明日」

はい、と言って私は電話を切った。今やってる用事が長引きそうって意味だったのかな?と、考えながら私は帰路についた。

_______________________________________________

翌日、私は八神さんとの約束通りに横浜九十九課に顔を出していた。私はさっそく、長谷川店長から聞き出した情報を皆に共有した。それを受けて、海藤さんが言う。

「なるほどな…。川村かわむらはとんだクズ野郎だな」

「そうですね…。ただ、店長から聞いた感じだと、川村は事件当日も閉店間際まで店にいたらしいので、やっぱり犯行は不可能ですね…」

私がそういうと、八神さんが口を開いた。

「川村本人が言ってた通りだな…」

八神さんは私がキャバ嬢になっている間、川村本人からアリバイについて話を聞いていたそうだ。私を店に送った後、川村の自宅前で張り込みを始め、夜になってようやく川村は帰ってきたらしい。

「うーん…一旦情報を整理しようか」

そう言って、八神さんは状況整理を始めた。

今回の事件の被告人は広田真一ひろた しんいち。彼は事件当日、午後7時にいつも通り仕事から帰宅し、玄関の鍵を開けて自宅内に入った。そしていつも通りリビングへ行くと、母親である広田明美あけみの死体があった。そこで彼はパニックになり、近くのネットカフェに逃亡。翌日午前10時に同じアパートに住む女性が遺体を見つけて通報し、同日正午に逮捕された。
広田真一からは合鍵について知っているような発言はなかった。おそらく、広田明美が秘密裏に作ったものと思われる。そして、近所の住民により部屋に出入りする目撃証言があったことから、合鍵を唯一持っていた人物は川村隼人はやと。しかし、川村は事件当日に閉店間際までキャバクラに滞在しており、犯行は不可能。発言から察するに、親心会と何か結託している様子である。

「…気になるね、その親心会ってやつ」

整理された情報を聞き、杉浦くんが発言した。

「お膳立てっていうぐらいだから、深い関係があるんだろうけど…知り合いでもいるのかな?」

私がそう言うと、九十九つくもくんが話し始めた。

「なるほど…。では、我輩はその親心会に川村の知り合いがいないか調べてみましょ」

「ああ、頼むよ九十九。俺たちも親心会について調査してみる」

八神さん達は事務所を立ち去ろうとする。

「あの、私は何をしたら…?」

事件の詳細を聞いている以上、これで依頼完了とするわけにはいかないと思い、私は八神さんに尋ねた。

「ああ、苗字さんにはまた追々協力してもらうかもしれないけど、今のところは大丈夫かな。とりあえず杉浦と時間潰しておいてよ」

「は、はあ…」

「じゃ!」と言って八神さん達は事務所から出て行った。
prev // list // "next
top