隊を結成した。つい先日。申請書も無事出せたし。隊室もその前に貰ってはいたけど、あれはよかったのかな?まぁ、いいか。そうそれで、その隊室にぼちぼち物が増えだした今日この頃。すっかり取り零していたことをやらなくてはならなくなった。やらなくては、と言うかやります。
「遅すぎない?」「へ?」「流石にもう出来ているだろ」「え、だから何が、」「俺的には」「太刀川くんはちょっと黙ってましょうか」「まだ何も言ってねぇのに!!」「まぁまぁまぁ」
食堂のある一角でそんな会話が突如として発生した。初っぱなからなんの話なのか頭上にハテナが飛び交うも、そんな私などお構いなしに話を続行させるいつものメンバー。望様にアホ宮にバカ慶につつみん。
なんだなんだと聞き耳をたててみる。話的に当事者の筈なのに何故だか蚊帳の外状態で話が続いていくがどうやら私のとこの隊服の話らしかった。あ。一週間ほど経つがなかなかトリオン体時の服装が変わらないから不思議に思っていたんだとか。あ。
「戦う花嫁!とかでもいいじゃねぇか!なぁ紅香」
ぐるぐると考えていれば、何がどうなってそんな事に落ち着いてしまったのか、話を右から左に聞き流していた私には到底理解出来なかった。取り敢えず、
「……………絶対ねぇよ」
お前は私の隊にいったい何を求めているんだ。
バカ慶の馬鹿発言にそう返すので精一杯で、つつみんが苦笑いしかしてなかったことしか覚えていない。
と、言うわけで。
「隊服のデザインを話し合いたいと思います」
私の号令にいっきに集まる視線。続いてはい!と元気よく一つの手が上がった。うんうん今日も元気でいいね、それではどうぞ野菊ちゃん。
「それって自分らで決めて良かったんですか!?」
ごめんね野菊ちゃん。その通りです。
「ま、まぁこの際それは置いといて」
「忘れていたのね」
「置 い と い て !」
何がいいとかあるかなぁ!?やけくそのヤケっぱちな叫びであった。最早開き直りである。爛々と眩しいほどなキラキラお目目にいったいどうして真実を言えようか。いや言えない。言いたくない。まさかすっぽり忘れていただなんて、言えるか!しかしそんな開き直りにぐでんと首を傾げる後輩二名。え。なに?
「何が良いって、この子達初めてなんだから何かしら具体例を出してからにしなさいよ」
まったくもう。とぷんぷん怒りながら指摘してくれた姐さんの助言にああと納得。そっかそっか。そういうことか。完成形しか見てないもんなぁ。デザインなんてなんでもいいんだけど0から出すとなると普通なら考え込んじゃうそんなパターンか。よし、ここはいっちょ先輩らしいところを見せるとしよう。そうだなぁーう〜ん。
「うーん、みんなが着てるようなジャージ型じゃなければなんでもいいんだけど。ほら周りに習う!ってのもいいとは思うんだけど群集に紛れたくないっていうかさ、色は服装に合わせるとして。こうグッとくるものがいいなぁ〜。誰も真似しないようなやつ?」
「注文が多い」
ごめんなさい。
姐さんにいなされた。姐さんは私に対して辛辣だと思う。チビッ子達には優しいのに。贔屓だ贔屓!
「何か言いたそうねぇ?紅香?」
「そんな滅相もない!」
あれ!?違う!楽しんでるぞこれぇぇ!!
そんな私たちの通例コントに対してさっきからキラッキラお目目の野菊ちゃんがさらにこれでもかとキラキラオーラを発してきて、はい!はい!と元気よく挙手してきた。うん。もうね、癒されるレベルの可愛さだよね。ホント野菊ちゃん入れて良かったわ。芋づる式で椿姫ちゃんGETもできたし。しかし、そんな癒されタイムも一時のものに過ぎず。次の野菊ちゃんの発言で私のテンションも急降下を辿ることとなった。
「それってメイドさんの服でもええんですか!?」
戦うメイド!なんちゃって、と可愛らしく言い切る野菊ちゃんに私は静かに項垂れるしかなかったことは察してほしい。野菊ちゃん。考えていることがあの馬鹿と同じって。野菊ちゃん………。
「うーん、メイドならぬ冥土なら死神服かしら」
「姐さんまで何言ってんですか」
「スーツと黒装束、どっちがいい?」
「あれ!?聞いてない!??」
そんなバナナ、いや馬鹿な。
「巫女服なんてのも乙よね」「なんでそうな」「真っ黒なセーラー服もかわええですよね!」「また闘いとか言」「それを言うならブレザーだって、っていつも着てるか」「それって私服とかわらないんじゃ」「戦闘で動きやすさなら軍服ってのもありね。あ、忍装束も捨てがたいわぁ〜」「どこ行こうとしてる」「動きやすい……あ!すく水ー!!」「乃々ちゃん、それはただの露出狂よ」「…………………………。」
あれれ?あっれぇぇ??おっかしい〜なぁ。会話に入れないぞ〜?
「え、えっとあの〜……」
「普通のは嫌なんでしょ?」
ね?紅香?と副音声が聞こえてきそうで、というか聞こえてきた。確実に第二の声付だった。止まらない野菊ちゃんと姐さんの談義にお茶を啜りたくなりながらもなんとか間に入ればこれだ。若干涙目である。
「まぁ私は着ないからなんでもいいんだけど、閑はこれでいいのかしら?このままだと突拍子もないものが出来上がるわよ?」
突拍子もないものを作り上げようとしていた張本人が何を言う。なんて命知らずなことなど言えるはずもなく。寧ろ元凶は自分な訳なので尚更お口チャックだ。
姐さんの言う通り今までああだこうだと話し合っていたのは九割方、姐さんと野菊ちゃんの二人。姐さんが言ってくれなければ椿姫ちゃんの意見を取り溢すところであった。危ない危ない。ごほんっ。態とらしい咳払いをし、椿姫ちゃんへと向き直る。しっかりせねばと胸の内で渇を入れる。姐さんが最年長かもしれないが私がここの隊長なのだから。
よぉし!行け!私!
「椿姫ちゃ「無」……………………………。」
即答だった。寧ろフライングだった。
「まだ何も言ってないよ!?」
「あら、私が聞いてたじゃない」
「私はまだ何も言ってなぁい!!」
「いやいや〜閑〜。ここはなんも無くてもボケなあかんとこやろ〜」
………………………………………………………。
「着ぐるみ」
「まさかそう来るとは」
たっぷりと溜めたわりに飛び出てきた提案がふざけすぎてて、ああ、やっぱりこの二人は血が繋がってるんだなと再確認させられた。椿姫ちゃんもふざける時ってあるんだ。
「因みに言うときますけど、あれマジでっせ」
……………………マジ?
「もう姐さん隊長代わって」
「何馬鹿なこと言っているのよ」
後日、くじ引きで決まりました。
18.3.13
おちゅかれ私。