まだお嫁には行かないでね。












いつもの日常が戻って来た。元に戻って嬉しそうにしているマルコさんとエースとロシーを見ながら私は朝ご飯を食べる。


新聞を片手におにぎりを食べるマルコさんに久しぶりに爆弾おにぎりにかぶりついて食べているエースとお味噌汁を吹き出しちゃったロシーを見ているとこっちの方がしっくり来るっていうか……。




でも、やっぱり残念そうにする兄弟達も居るんだけどね。サッチさんとか。


おれの癒しが……!って、朝ご飯を作りながらずっと言ってたからね。









「…………おれの可愛い妹達が…………!」

「サッチまだ言ってんの?もうそれ聞くの5回目だよ?そろそろウザイんだけど。……ちょっと、味噌汁のお代わり僕の分とロシナンテの分も入れて持ってきてよ。暇でしょ?」

「ハルタ酷ェ……!」

「…………そう言いながらもちゃんとお代わり取りに行ってくれるところ好きだけどね」









いつもなら野郎はセルフサービスだ、って言ってあまりお代わりを取りに行ってくれないけど珍しくハルちゃんのデレたのが見れたのか、少し嬉しそうにお代わりを取りに席を立ったサッチさんの背中を見送る。


ロシーに付近を渡しつつ、爆弾おにぎりを枕に寝てしまっているエースを起こしていればマルコさんが声を漏らす。


隣に座っていたイゾウさんがどうした?、とマルコさんの読んでいた新聞を覗き込めばあァ、成程……。と納得して少しテーブルの上を片付け始める。


空いたスペースにマルコさんは読んでいた新聞を開いて置いてコンコン、と指でその記事を指した。









「…………近々世間が驚くビックカップルが誕生するらしいよい」

「ビックカップルですか?」

「大物同士がくっ付くんだとよ、」








テーブルに広げられた記事を除き込めば記者の予想や世間の予想までも載っているみたい。


そこにはルフィとハンコックさんの名前が書かれていて、いつの間にか起きていたエースがそれを見て咳き込んでしまった。


エースの背中を擦りながら記事を読み進めていればお代わりを持って戻って来たサッチさんも驚いているみたいだ。









「……ルフィと海賊女帝!?」

「…………エースの弟がもし本当にあの女帝とくっ付いたらエースの義妹になるって事だよなァ……!!エースの義妹ならおれの義妹にも……!!!」

「ちょっと、サッチ鼻の下伸ばし過ぎだよ。」

「だってあの海賊女帝だぞ!?」








まぁ、絶世の美女ですもんね。サッチさんの気持ちはすごく分かる。









「ハンコックさんルフィの事を話してる時すっごく可愛いんですよね」

「え、なまえ知り合い……?」

「前に一緒にご飯を食べる機会があってその時にお友達になったんです!たまにお手紙も来ますし……!殆ど恋バナばかりなんですけどね!」








ハンコックさんから来るお手紙にはルフィの事ばかりなんだけど、それがすごく可愛くて恋ってやっぱりいいなぁって毎回思っちゃうんですよね。










「…………海賊女帝と恋バナ……。」

「あとはルフィの胃袋を掴むには、って料理のレシピを教えたり……、とか他にも色々とお話してますね!」










私もまたハンコックさんにお返事書かなきゃな……!


…………っとまぁ、それは置いておいてビックカップルが誕生する噂が気になる。









「……ビックカップルって事はシャンクスさんとかミホークさんくらいの方が結婚しちゃうんですかね?」

「まァ、ビックカップルって言ってるくらいだからねェ……」

「赤髪も鷹の目もその可能性はあるかもしれねェが、アイツ等が結婚かよい……。想像つかねェな、」

「確かにね、…………じゃあ、オヤジ?」










ハルちゃんの言葉に全員が腕を組んで考える。オヤジさんが結婚……。









「おかあさんが出来るって事ですか……、」

「お袋か……、でもオヤジに合う女だろ?」








うーん、と考え込む。


カッコいいオヤジさんに合う女性……。綺麗だけじゃダメだし、強くて逞しい女性……?




…………そんな人居るのだろうか。









「…………ビッグ・マムとか?」

「「「「いやいやいや、それは無い」」」」









ハルちゃんの呟きにマルコさん達は声を揃えて否定した。


ビッグ・マム……?



ロシーはその人を知っているのか苦い顔をしているし、私だけがその人を知らないみたいでエースにどんな人なの?、と聞いてみれば四皇の1人だって教えてくれた。










「もしもオヤジとビッグ・マムがくっ付いたとしてもおれはお袋って呼べねェし、向こうの家族がおれ達の兄弟になりゃあもうやべェだろ!!そりゃあ戦力は今まで以上に上がるが昔のビッグ・マムは美人だったが今は違ェし…………!!」

「…………サッチ!オヤジだって結婚する相手にビッグ・マムは流石に選ぶ筈無ェよい……!」

「だが政略結婚って事を考えりゃ、四皇同士じゃなくてもその子ども同士を結婚させりゃあ手を組めるし十分ビックカップルが誕生する事も有り得るんじゃねェか?」









イゾウさんの考えに皆黙り込んでしまった。


そうだよね、政略結婚だってある訳だし。









「それなら、海軍のお偉いさんの娘さんとかと王下七武海の誰かが政略結婚させられる……って事も有るかもですね。別に海賊同士の結婚ともこの記事には書かれてないし、ただビックカップルが誕生するって事しか書いてませんし!」

「……そうだな、オヤジからも何も聞かされてねェしおれ達は関係ねェ話しだよな」









ほっと息を吐いて落ち着くようにコーヒーのカップに口を付ける。












「でも、結婚って憧れちゃいますね」









そう呟いてカップをテーブルに置いてまた記事に目を通すのだけど、シーンっと食堂中が静まり返ってしまった。


……どうしたんだろう、と目線を上げればガシッと肩をサッチさんに掴まれて私はビクッと肩を揺らして驚く。









「……ど、どうしたんですか…………?」

「なまえにはまだ結婚は早ェ……!!!そ、それとももうそんな相手が居るのか!!!?お兄ちゃん達はそんなの許しませんからね!!!!」

「え、えっ……!」








ガクガク、と肩を揺さぶられ他の兄弟達からもそうだそうだ!と声が上がる。


え、ちょっと……!エースやロシーからも結婚するのか……?って捨てられた子犬のような目で見られているし……!









「…………赤髪かよい……?」

「それともあの副船長……?」

「よし、マルコひとっ飛びして赤髪をつぶ…………じゃねェ挨拶して来ようかねェ……」









席を立ち食堂から出て行こうとするマルコさんやイゾウさん、ハルちゃんに私は待って!と声を掛ける。









「私結婚する気ないですから……!!結婚は憧れてるだけで、相手なんか居ませんよ……!!恋人ですら居ないのに……、結婚だなんて……」









相手も居ないのに結婚なんて出来る訳無いし……。




それ以上に私にはオヤジさんや、沢山出来た家族から離れる事が出来ないもの。




やっと落ち着いてくれたマルコさん達の顔を見ながら私はそう思う。それにしても、ビックカップルの誕生ってやっぱり気になっちゃうなぁ……。








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