食べる量を見極めよ!






羽根ペンをクルクルと手の中で回し目の前の書類を片付けていく。今日は珍しく厨房には立たずただひたすら自室で山積みになった書類の束を片付けていた。くそっ、書類整理は苦手だからとサッチさんに頼まれ朝からやってはいるが中々減らない。


本当にこう座って机に向かって仕事をするなんてどれくらい振りだろうか。ずっと食材を相手にしていたから良かったもののやはり、こう物書きするのは苦手だ……。


少し休憩しようと羽根ペンを机に投げそのまま突っ伏した。




あぁ……。ずっと文字を書く事を繰り返してて手も頭も痛い。どれだけ書類貯めてたんだサッチさんめ……!




ちょっと甘めのカフェオレが飲みたい。プリンが食べたい……!前の仕事でもよく記録を手書きで記入してた時に甘い物を食べながら仕事してたなぁ……。パートのおばさんから飴とかチョコレートとかお菓子を貰って頑張ってたっけ……。


調理に行けばたまにおかずの味見させてくれたり事務所のおじさんからもお煎餅とかよく貰ってたっけ。今思えば餌付けされていたのだろうか。私ってばどれだけ腹ペコキャラだったんだろう。


貰ったお菓子の事を考えてたらお腹が鳴った。気が付けば昼食も食べるのも忘れて作業してしまっていた事に集中し過ぎだろうと思わず笑ってしまった。


書類の山もあと少しで片付きそうだし、ちょっと気合入れてやり込むかな。











***











あれだけ山積みになった書類も全て片付け終え後はサッチさんの所へと持っていくだけだが、もう疲れてしまった。椅子から立ちベッドへとダイブすれば直ぐに瞼が落ちてくる。お腹は空いていたがピークも過ぎ今はどうでもいい。別に食べなくてもいいかな。


体には悪いとは分かっているけど、もう動きたくないんだよね。




それに、動かなくてもそろそろお迎えが来そうだし。ドスドスと足音が近付き直ぐにバンっと大きな音を立てて部屋の扉が開かれた。











「なまえー!!」

「うわっ!」








エースさんが飛び込んで来てそのまま私が寝ているベッドへとダイブしてきた。うつ伏せに寝ていた私の上に覆い被さる様にのしかかって来るものだから咄嗟に避けて私の隣へと転がってきた。










「お前ちゃんと飯食いに来いってサッチが怒ってたぞ?」

「そのサッチさんが貯めに貯めまくった書類を片付けていたせいでご飯食べに行き損ねたんですって……。」

「うわ……、これ1人で片付けたのかよ……!スゲェな……!」






机の上に置かれた書類の量に感心しながらエースさんは声を上げた。







「もう疲れて動けないんです、誰かさんのせいで。ちょっと寝てからご飯食べに行きますから」

「でも、サッチが飯作ってあるから早く連れて来いってよ」

「……あらま。」

「書類はおれが持ってやるからさ。行こうぜ!」





私の体を起き上がらせ手を引っ張るエースさん。ご飯を用意してくれているなら行かなきゃ悪いし、エースさんは山の様な書類を両手に抱えてくれているしゆっくりとベッドから腰を上げ部屋を出た。




こうして、気にして迎えを寄越してくれるサッチさんは優しい。エースさんだって嫌な顔せず迎えに来てくれるし。




それにしても、頭を使い過ぎて少し頭痛がする。食べたら治るだろうと思うけどご飯より甘い物が食べたいです……。シフォンケーキに紅茶……。初めて島に降りた時のカフェでケーキを食べまくっていたのが懐かしい。


あの時食べたシフォンケーキまた食べたいなぁ……。店員の女の子も可愛かったしね。








「おーい、なまえ?大丈夫か?」

「ちょっと甘い物食べたいなぁっと……」

「飯の代わりにお菓子とかダメだからな」

「……ですよね」






残念だ。もう私がやる事皆分かってるんだろう。放っておいたらご飯そっちのけで甘い物で済ましてしまう所をサッチさんに見られてたからなぁ。マルコさんにまで飽きられた目で見られるし。


お米も好きだけど甘い物もそれと同じくらい好きなだけなんだし。2日に1回は甘い物少しは食べたいしなぁ……。


まぁ、取り敢えずはしっかりご飯食べよ。サッチさんご飯用意してくれたのは嬉しいけど毎回量が多いんだよね……。残したら悪いしいつも気合で口に詰め込んで食べ終わって後悔するんだよね。


今日のお昼は何だったかな。なぁんか、オムライスっぽいなぁ。この前何食べたいか聞かれた時にそう答えたからオムライス作ってくれてそうだ。




それから前を歩くエースさんと会話しながら食堂に着けば既にテーブルの上に特大のオムライスとポテトサラダとスープが用意してあった。まさかとは思ったがオムライスにはケチャップで私の名前が書かれており明らかに私用だった。エースさんもいるし少し食べるの手伝ってもらおうかな……。


美味しいけどこんなに流石に食べられないって言うのに日に日にご飯の量を何故か増やされていく。細いからもっと食べろと言われるけど中々入っていかないんだってば……!









「お疲れさんなまえ!助かったぜ、ありがとな!」

「サッチさん……。本当に貯め過ぎですよ」

「部屋行ったら飯そっちのけでなまえベッドで疲れ果てて寝ようとしてたぞ」

「あれだけの量やりゃ疲れるわな……。ほら、そこ座ってゆっくり飯でも食え!」

「……食べますけど、食べるけどこれは量が多過ぎますって……!3分の1も食べれないですよコレ!」

「3分の1ってマジかよ。」

「サラダとスープでお腹いっぱいになりますって、」

「……まぁ、食えるだけ食えよ。残してもエースが食ってくれるし」

「任せろなまえ!!」

「エースさん頼もしい……!でも、オムライスが食べたいってリクエストしたのは私ですし、折角作ってもらったし頑張ります」







席に座りスプーンを持ち頂きます、と手を合わせて出来たてのオムライスを掬う。口に運べばケチャップライスとフワフワの卵がとても合う。サッチさん特製のオムライスはやはり美味しい。次から次へとスプーンが進みサラダもスープも美味しい。


エースさんも書類をテーブルに置き椅子に座りサッチさんに渡されたスプーンで私が食べている反対の所から食べ始めた。


いつ見ても凄いな、いい食べっぷり。手を止めてエースさんを見ていればサッチさんにデコピンされ食い尽くされる前に早く食べろと言われ再び手を動かす。


今度からエースさんと一緒にご飯食べたら残す事もしなくていいんじゃないか?


それよりも、そろそろ私の食べる量を合わせてくれると嬉しいんだけどなぁ……。











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