▼お皿は最強アイテムだと......?
数時間前に敵船から奪った悪魔の実をサッチさんが見付け、これから能力者となるサッチさんを祝う為に、見事に敵船を沈めた白ひげの勝利の為にと宴が開かれた。
サッチさんを除く4番隊総出で料理を作っては甲板まで運んだり酒が足りないと言われれば酒樽を追加しに行ったり空いた皿を引き上げに行ったりといつもの仕事量以上に忙しく慌ただしく動き回っていた。
明日これ、筋肉痛だよ……。宴ってこんなにも大変なんだね……。料理も作っては運びお酒も注文通りに作ったり料理の合間に皿洗い……。一番忙しくて過酷なところに入隊してしまったみたいだ。
って、それも大事だけどもっと大切な事があるじゃないか。甲板に作った料理を運びサッチさん達の様子を見に行けば宴の主役でもあるサッチさんは見せびらかせるように悪魔の実を自慢していた。そんなサッチさん達の近くにはティーチさんもいる訳で……。
お酒片手にまたチェリーパイを頬張っている。私も何度かティーチさんと話した事があるが気さくでいい人で親戚のオジサンに居そうな感じで話しやすかった印象しか無かったが、原作を知っている為少し信じられない所もある。でも、昼間のあのサッチさんに向ける分かりやすい表情で確信できた。この人はは必ずヤると。
うーん……、原作では直接殺されるシーンは無いんだっけ……?うわぁ、どうするよ、でもティーチさんはサッチさんの事を友達だって言ってたような……。思い出せ、もしも自分がティーチさんの立場ならどうする。
宴が終わってベロベロになったサッチさんを部屋に連れ込む?いやいや、女の子だったらサッチさんは着いて行くかもしれないが男の人に誘われて行くか?でも、悪魔の実を奪うって言う目的を成し遂げる為にはやはり密室に連れ込むしかないよなぁ……。宴が終わってから行動に移る他考えられないし。宴真っ只中で奪うなんて事確実に有り得ないしね。
さぁて、まだまだ宴も終わらないと思うから料理やお酒を運ぶ事をメインになるべく甲板を回ってティーチさんの行動を観察だ。
それから数時間後。やっとこさ、お開きとなりました。各自、部屋に戻ったりそのまま甲板で酔い潰れて雑魚寝している人や説教をしている人に正座して説教を受けている人など様々だ。どうして、お酒の席で説教始める人って必ず何処の世界でも居るんだね……。
まぁ、そんな事はさておきだ。……あぁ、動き出したよ。
肩を組んで船内へと消えていく2人。サッチさんの片手に悪魔の実。そして、ティーチさんは酒瓶を手に。サッチさん、お酒もたらふく飲んで上機嫌だ。
そんな2人や他の人達に気付かれないように床に散らばったお皿を回収しつつ自然に船内に戻り厨房に戻ろうとするように装い後をつけた。足音を立てずに気配を殺し着いていく様はさながらアサシンのように。ちょっと、不謹慎だがワクワクしている気持ちと上手く立ち回れるのか不安な気持ちが半々だった。
戦闘能力0の私にティーチさんは止められるのだろうか。サッチさんを守れるのだろうか。考えれば考える程不安に押し潰されそうになる。
それでも、彼等は生きているんだ。漫画のキャラクターじゃない。生身の人間なんだから。
見て見ぬ振りも出来る、今なら引き返す事だって出来る。だけど、やると決めた以上サッチさんには恩返しだ。私を拾ってくれた人なんだから。初めから誰よりも気に掛けてくれるのはサッチさんだった。
死んで欲しくない。これから起こる事も止めたい。バッドエンドじゃなくて、ハッピーエンドが見たいんだ。
そして、2人は部屋に入った。ティーチさんにバレていないだろうか。息を潜め、その時を待つ。
そこで、気付いた。
武器を何も持っていない事を。ヤバい、カッコつけてここまで来たけどどうすんのよ!
手にはお皿。え、ちょっとお皿で戦うの!?どう戦ったらいいんだ……!お皿で戦うキャラって今まで居た?あの、悪魔で執事さんはフォークやナイフだったけど今までお皿で戦っているキャラは見た事ない……。
あぁ……。これ私が代わりに死ぬ……?
いやいやいや、サッチさんを守れるなら本望だが。死んだら私どうなるの。元の世界に帰れるのか?死んだら終わりでしょうよ。
仲間殺しでエースさん飛び出して戦争まっしぐらじゃないか……!
__ガンッ!
物音で直ぐに現実に引き戻される。あぁ!もう成るようになれだ!!
私は扉を蹴り破るように足で開ければ扉が吹っ飛び驚く。そして、部屋の中では悪魔の実を既に奪いサッチさんにトドメを刺そうと襲いかかろうとしているティーチさんと目が合った。
サッチさんは怪我しているものの無事だった……。良かった……!
私はお皿をティーチさんに投げる。イメージは手裏剣を投げるように。
すると、お皿はティーチさんの頬を掠め壁に突き刺さる。
「えっ……。お皿すごっ……!」
って、違う違う!ティーチさんをサッチさんから離れさせないと……!またお皿を構えティーチさんに向けて投げれば今度はティーチさんの服が切れた。
えっ、ちょっとお皿最強……?また壁に刺さっちゃってる……。
「なまえいつから気付いてやがった……!」
サッチさんから距離を取ったティーチさんが私を睨む。うわぁ、ザ・悪役って顔だ。怖い。
それにしても、私のその前のセリフ無視なんだね。お皿の事も無視するんだ……。
まぁ、その方が有り難い。真面目に行きますよ、ここから!
「……ティーチさん分かりやすかったですよ、あんなに物欲しそうに悪魔の実見てりゃ気付きますって」
「ゼハハハ!誰1人おれの企みに気付かねぇと思ってたんだが、お前は違ったみたいだな……!なまえから片付けてやろうじゃねぇか……!」
そう言って、ティーチさんは私に向かってくる。ちょっと、こっち戦闘力0だっての……!!こんな所で死ぬ訳にいかないし、サッチさんだって怪我してるし巻き込む訳にもいかない……!
「……っ!なまえ逃げろっ!!!」
ボロボロになったサッチさんが苦痛に顔を歪ませ叫ぶ。良かった、まだ叫ぶ気力はあるみたい。
安心したと同時にサッチさんに大丈夫、と笑い向かってくるティーチさんに残りのお皿を叩き込んだ。お皿最強。
顔面にお皿を叩き込めばティーチさんは壁に吹っ飛んだ。
「ほら、仲間殺しは未遂ですけど家族に敵意を向けた事は罪ですよね?それに人の物は盗ったらダメだって教えられませんでした?サッチさんに返してくれませんか、悪魔の実」
「……これだけは渡せねぇ……!」
「……じゃあ、奪い取りましょうか」
そう言えば、顔を引き攣らせ身構えるティーチさん。でも、どうしようか。もう私の手にはお皿は無い。
武器になりそうな物も落ちていないしどうするかな……。
あの壁に刺さったお皿はティーチさんを吹っ飛ばした事で割れてしまったし最強アイテムのお皿が尽きてしまった。
ここでポケモンのどろぼうって技が出来たら確実に悪魔の実を奪えるんだけどなぁ……!私持ち物持ってないし!
って、バカな事考えてないでどうする。このまま戦い続けようにも喧嘩なんかした事無いしどうする……!?
と、その時ティーチさんは煙幕みたいな物を投げつけ私が吹っ飛ばした事で出来た穴が丁度船から逃げれる退却路を作ってしまったみたいでそのまま消えてしまった。
ちょっと、マジですか。最後カッコつけて悪魔の実奪おうと考えてたのに空回りじゃないか……!それにティーチさんヤミヤミの実ゲットしちゃったじゃん……!
もうこれは落とし前を付けるってエースさん飛び出して行っちゃうパターンじゃないか……!サッチさんは怪我はしているけど死亡フラグ折れたから良かった……!
でも、次はエースさんとオヤジさんのフラグをへし折らなきゃ……!ティーチさんの次は戦争をどうするか考えなきゃいけないじゃないか……!