仲直りと、最後の共闘。












エースに渡していた電伝虫が鳴って、数コール目で受話器を取って出れば久しぶりに聞く事の出来たティーチの声に私の心はホッと安心していく。電話の向こうのティーチは少し呼吸が乱れているみたいだけど、その理由は分かっている。


でも、ちゃんとエースが無事にティーチに電伝虫とお守りを渡してくれて本当に良かった……。









「……ちょっと、待っていてねティーチ」








少し話してからそう言って、私は呼んでいたサッチに手招きをして電伝虫を渡す。ティーチもサッチもお互いがそれぞれ話したい事があるだろうし、代わってあげたわ。


イゾウが入れてくれた美味しい緑茶を飲みながら私は2人の会話に耳を傾ける。ちゃんと、仲直り出来るのかしらね?、なんて思いながらサッチの横顔を見ていれば照れ臭そうに私にあっちを向いててと口パクで言って話し出す可愛いサッチにクスッと笑って窓の外に視線を移したの。









***









待っていてね、とお袋に言われて少ししてからずっと謝りたかった親友の声が聞こえてきた。








『…………ティーチ、久しぶりだな。』

「…………サッチ、」








謝らなきゃいけねェのに、言葉が上手く出て来ない。


…………サッチは怒ってるだろう。知らなかったとはいえ、サッチの夢をおれは奪って潰しちまったんだ。悪魔の実はなかなか手に入らない代物で、次はいつ自分の手元にくるか分からねェんだからよ。……もしかしたら、もう手に入らないかもしれねェし……。









『……ティーチ、お前には嫌な思いさせちまって悪かった。おれは親友のお前を能力者にしちまったんだ、…………海が好きなのに、おれのせいで一生泳げなくさせちまった。』









だから、ごめんな。、とそう言っておれよりも先に謝ってきたサッチ。


おれが先に謝らなきゃいけねェのに、でもそれ以上におれはサッチの言葉が嬉しくて仕方無い。まだ、こんなおれの事を親友だと呼んでくれたのがすごく嬉しいんだ……!









「…………おれだって、お前の夢を潰しちまったんだ。ガキの頃からずっと聞いていたのにおれは……!!」

『……まァ、能力者になって家族を守るって夢はあったけどおれのそんな夢よりおれがお前を一生カナヅチにしちまった事の方が重大だろ?』

「……泳げなくなっちまっても浮き輪使ったらいくらでも泳げるから大丈夫だ」

『…………はは!!浮き輪ってお前!!お前の体に合う浮き輪なんて無ェだろ!!!ティーチの腹にはもう天然の浮き輪があんじゃねェか………………っあいた!』

『コラ、サッチ!人の体の事を面白可笑しく言ってはダメでしょう!』

『お、お袋ごめん……!!』

『謝るのは私じゃないでしょ、』

『ティーチ、ごめんなさい』












後悔でいっぱいで泣きそうになっちまってたが、サッチとお袋のやり取りのお陰でおれは笑っちまう。


楽しそうに電伝虫から聞こえてくる声にエースも近付いてきておれとエースは笑い合う。









『……まァ、仲直りも出来たって事だが……。おれの悪魔の実を食ったんだから一発くらいは殴らせろよ!』

「あァ、殴られて許してくれるならいくらでも殴られてやる。でも、今度はあんなクソ不味いタルトじゃなくて美味いタルトを頼むぜ」

『おう!お前の好きな美味過ぎて頬っぺたが落ちちまうチェリーパイでも作ってやる!』

「いや、チェリーパイはお袋が作った方が美味いから」

『…………ティーチって本当にお袋の作るチェリーパイ好きだよな』

「あァ、好物だからな」









思い出したら食いたくなってきたけど、まだおれは当分帰れない。


このヤミヤミの能力を自分のモノに出来るまではオヤジの船には戻れないからな。








「サッチー!良かったな、仲直り出来てさ!」

『おう!エースもありがとうな!』

「じゃあ、おれティーチに電伝虫もお守りも渡したし今から帰るよ!だから美味い飯頼むよお袋!おにぎりが食いたくて仕方ねェんだ!」

『……エースもティーチもコックのおれの飯よりお袋の飯のが好きなんだな……』

「「あァ!」」

『おれもお袋の飯が一番好きだけどな!!』








お袋の作る飯より美味い物って無ェしな。お袋の味でここまで育ったんだからよ、……それにサッチの作る飯もお袋の作る飯と味付けが似てきてると思う。


お袋のレシピで作ってるからそうなっちまうんだと思うけど、









なんて他愛も無い話をしていれば慌てたように仲間達がボロボロになりながら走って来たんだ。何事かと、聞けばおれとエースが能力をぶつけ合ったせいで火拳と黒ひげが暴れていると騒ぎを聞き付けた海軍が来ちまったらしい。


…………ヤバいよな……。おれとエースは顔を見合わせてお袋やサッチ達にこれ以上迷惑を掛けないように通話を強引に切って立ち上がって迫り来る海軍に立ち向かうべくボロボロになった体に鞭を打ってこの場を切り抜けようと駆け出した。




まさか、これがエースとの最後の共闘になるとは知らずに。









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