サンタ服を着せたい
「クリスマス近いじゃん」
「…そうだね」
マフラーを巻いている嵐山准等身大人形と向き合って、じっと見つめていた吉子ちゃんが唐突に口を開いた。この時点で地獄の予感がしていた。
「准くん、帽子だけになるよね…サンタ服も着せたいけど」
「帽子は決定なんだね」
あ、想像していたより地獄じゃなかった。「クリスマスに准くんと過ごしたい…」とか言い出すかと思った。嵐山准等身大人形の准くんの衣装は固定である。フィギュア仕様のため、文字通り隊服で固められているのだ。
「赤いからまあいいんじゃない?」
「そうなんだけどさぁ〜!ハロウィンも思ったけどやっぱ惜しいよ、着せ替えしたい!」
准くんはそもそも素材がいいからなんでも似合うのに、と語り始めた吉子ちゃんに「もう嵐山くんに着て貰えば?」と冗談半分に提案したら「嵐山くんはサンタ服着てオフィスにずっと立っててはくれないから…」と悲しそうに返された。それもそうだ。当日イベントがあるから…とか理由があるならまだしも、12月初めからクリスマスまでサンタ服でわざわざメディア対策室まで用もないのに来てはくれまい。
「准くんがどれだけ都合のいいイケメンなのかしみじみするね…」
「なまえちゃん、その言い方ヤダ」
顔をしかめた吉子ちゃんにごめんごめんと言っていたら、めぐみちゃんも寄ってきた。
「なになに、准くんの話?」
「そうそう、サンタ服着せたいけど帽子しか無理だねって」
「……帽子もあやしくない?」
「えっ?」
「なんで?」
「准くんさあ、髪立ってるせいで帽子変な形になりそう。ていうかドンキとかにあるサイズが入るかもちょっと…」
後ろもボリュームあるからなぁ〜、と准くんを眺めるめぐみちゃんに、そっか!と納得していると、吉子ちゃんがボソッと呟いた。
「……手作りかぁ…」
20181201